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挨拶をするのにこれほどの勇気を必要とするなんて知りませんでした。 黒崎君に、昨日の一言が嬉しくて、お礼に今度は私から挨拶をしようと思ったの…に、黒崎君がまだ来ません。あと五分で遅刻だよ。出鼻をくじかれたみたいでなんか凹む。 「黒崎君、今日来ないのかなー」 ボソリと独り言に混じって溜息も一緒に出た。緊張してた分、疲れたみたいで机の中から教科書を取り出すだけでも億劫に感じる。一限目は確か現国だったっけ。パラパラと意味もなくノートをめくれば、ふとノートに陰が落ちてくる。ハッとして左側を見ると、眠そうに欠伸しながらイスを引く黒崎君が目に飛び込んできた。 「あ、…おはようっ!」 「お、おう。おはよ」 ちょっと吃驚したように目を見開いて、ほんの少しホント少しだけ、黒崎君の顔が緩んだ。 ちょっとだけ自分が素敵だと思えた 自己満足だけど |