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電気を消して、布団に入る。擦り寄るように加藤君が枕元で丸くなった。よしよしと顎を撫でてやると気持ちよさそうに一つ鳴いた。オヤスミと言っているように聞こえて私も「おやすみ」と返す。今の声がもし“気安く触んじゃねえ”とかだったら恥ずかしいなどうしよう。 いやそれはないか。願望。 「あのね姫ちゃん!」 珍しく(本当に珍しく)姫ちゃんとお汲?゚ごしている。これぞ進歩というものだ。珍しく(結構珍しい)私から話を切り出す。話題性0.3%の私が話題を運ぶなんて。珍しく(そんな珍しくない)持参したお弁当のおかずを突きながら猫の事を話す。加藤君を拾った事を話すと目を見開いて「おなまえちゃんが飼うの?!」 と訊いてきた。え、何そのリアクション。 「うん!」 自信に満ちた顔で頷けば「…ネコ」と呟きながらマヨネーズと(缶)コーンを混ぜる作業を再開した。ていうかパン一斤て多くないですか? しかも自家製マヨコーン…シュールだ。混ぜ終えたマヨコーンをパンに塗りながら姫ちゃんが「どうして飼おうとしたの? 里親探さないの?」と尋ねてきた。考えもしなかったなあ。飼う事を前提で拾ってきたから(衝動的に、だけど)誰かに渡そうなんて考えてなかった。 「私が、飼いたいの。凄い人懐っこくてね、側に置いておきたいなあって」 「ふーん」 パンにかぶり付いた姫ちゃんが「気に入ったんだね」 と口をもぐもぐさせながら呟いた。 「白いネコでね、すっごい可愛いんだよ!」 思い出す度に頬が緩んでしまう。どこへ行くにも後を着いてくる姿がとっても愛らしいのだ。寂しがったりしてないかなあ。心配だなあ。一日中加藤君で頭がいっぱいだ。今は何してるのとか気になって仕方ない。 「名前は決めた?」 「うん! 加藤君っていうの」 「か、とう? ええー!」 「なに?」 「熊吉朗の方がいいよ!」 「や、やだよ!そんな姫ちゃんシリーズみたいな名前」 「姫ちゃんシリーズってなに」 「とにかく加藤君だもん」 「熊吉朗にしようよ」 「やだー!」 「名字だけじゃかわいそうだよ!」 「熊吉朗なんてやだー!」 「じゃあミドルネームで、加藤・熊・吉朗で!」 「加藤君でいいんです!」 早く会いたいなあ。 まっすぐ帰ろう |