黒曜石 | ナノ
×


小島君に一つ質問をされた。

「一護の事どう思ってる?」

どう思ってる。単純にいえば、好きだし。私の中で彼は恩人だとも思ってる。彼がいて今の私がいるんだ。私の世界でいうと黒崎君は親みたいな感じだった。例えが変だけど、そんな感じなのだ。単純にいうと好き、であって、その好きとは一体どんな意味なのだろうか。深く考える。小島君が私の答えを黙って聞いている。小島君の目に私が映る。小島君は何故こんな質問をしてきたんだろう。どうして? 好奇心?
――― それよりも今は質問の答えを考えなくちゃ。質問自体は単純なはずなのに、答えがどんどん複雑になっていく。私の気持ちというのはどうしてこう簡単に纏められないんだろう。

「お兄ちゃん、みたいな人」

黒崎君は一人だった私を救ってくれた。側に、いてくれた。一番最初の人だった。小島君も、皆の輪に入れてくれた。黒崎君を世界の親とは例えたけれど、親というのも流石に違うかもしれない。もっと良く例えるなら、姫ちゃんに持つ好きと似てる“兄弟”のような、好き。黒崎君に求めているのはお兄ちゃん。夏梨ちゃんと遊子ちゃんを見て、黒崎君は本当に妹を大切にしてるんだな、って思った。だから、憧れた。遊子ちゃん達がすごく、羨ましかった。私のお兄ちゃんと黒崎君を重ねていたのかもしれない。姫ちゃんを本当に本当に、大事にしていて、愛していたお兄ちゃんが、私を見てくれないのが悲しくて寂しくて。お兄ちゃんに私も見て欲しいって思ってた。妹を大事にする黒崎君とお兄ちゃんが時々重なる。黒崎君は、私を見つけてくれた。いつも、背中を押してくれて、私の気持ちを大事にしてくれた。私は、彼に“お兄ちゃん”を求めてた。認めたくない好きだった。だけど、あまりにも、似ている。姫ちゃんの好きと、似てしまっている。

好き、がわからない。好きには色々あるんだと知った。小島君も、浅野君も、黒崎君も皆違う好きがあった。皆好きだけど、それぞれ違う好きがあった。だからこそ、混乱する。何を恋として、何を愛とする?黒崎君をどう思う? 好き。だけどその好きが何の好きかがわからない。人と関わった事がなかった私には難しい質問だった。もし、私が姫ちゃんのように素直で、可愛くて、素敵な女の子で…姫ちゃんのように、いつも回りに人がいる存在だったならもっと簡単に答えを見つけられたのだろうか?
誰かが言っていた。私は一つの事を深く考えすぎると。でも答えを見つけたいのは性格だから仕方ない…としかいいようがない。答えを見つけたい。…見つけられない。私が黒崎君に対する気持ちは好き、で、でもお兄ちゃんも求めてる。黒崎君に抱く好きが、まだわからない。

「黒崎君は、私の世界でとても大事な人だよ」

小さな声で言うと小島君が「そっか」と言ってくれた。今は、それが救い。


それは、充分な答えでも考えでもなかった
叩きだした返答