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「わ、私をぶん殴ってください…!」 どーんという効果音がつきそうな提案に、目の前で難しい顔をしていた黒崎君の表情が崩れた。ぎゅう、と目を瞑り拳を握った。 さあどんとこい! 「さあ!ばしこん!と一発!」 「いや、さあって言われても…」 「いいんです、私、いつも勝手だし…」 「え、ちょ、おなまえさん?」 「迷惑ばっかかけてるし…」 「おまけに泣き虫な」 「……、なにやってもダメっぽいっていうかやっぱり私あれだし、誰からも気にしてもらえないし可愛くないし」 「(なにこの子めんどくせー!)」 「いいとこない私だけど、グズッ…」 「………」 「わた、私ね、黒崎君に、」 「………」 「………」 「…俺になんだよ」 「…この前の、こと謝りたくて…」 「だから?」 「ご、ごめ、ごめん、なさい!」 「………」 「ほんとは…黒崎君を嫌いになったとかじゃないく、怒ってもなくて…その、だから」 「おなまえお前さあ」 「はい」 「すげーズリィよな」 「……そん、なの、私が一番わかってます」 「わかってねえ。ぜんっぜんわかってねえ!俺の方がよくわかってんね」 「ひいぃぃ…!」 「ンな風に言われて許せねーわけねーじゃねーか! このバカ!」 バシっと頭をはたかれる。平手が一発飛んできたかと思うと、払うようにバシバシと二撃目三撃目が飛んできた。あう、い、痛いっ…!(殴ってくれとはいったけど…!) 殴ってくれと言った手前 抵抗も出来ない。バカって言っていいなんて言ってないですよ! 確かにバカでバカでどうしようもないバカで自己中で自分勝手でバカだけど! 「ほんと、お前、バカすぎ!」 「い、いたい…! ていうかひどっ」 「いきなりわっけわかんねーし!」 「ちょちょ、黒崎く…い」 「喋んねーわ、元気ねーわ」 「やっ、ちょ、」 「遊子たちには責められっし」 「う、ご、ごめ」 「ルキアにはヘタレがなんのって…!」 「く、朽木さん?」 「…そしたらいきなり元気だし。しかも泣くし」 「………」 「お前は!空回りしすぎんだよ! つーかそれ止めろ!」 「あぐあう!」 「なんて言いてーのかわかんねーよ! ったくほんと、お前むかつくな!」 「ご、ごめ、なさ…っ…!」 「本気にしてんじゃねー!」 「(いつにも増して怖い!)」 ガミガミと黒崎君が怒鳴る。しかも頭へのバシバシ攻撃は休むことなく続いている。手加減してくれてるのはわかるが流石に20回以上も叩かれると痛いのです。もうこれ何回目だろう。しかも痛いのか、嬉しいのか、なんなのか未だ泣きやまない私。それにも黒崎君のツッコミが入った。お、鬼だ! 涙止めろだなんて急には無理ですってば! 「だって、出てきちゃ…! ごべ、」 「(ごべ…?)」 いつの間にか黒崎君は笑っている。いまだに私は泣いている。黒崎君爽やかに叩くのそろそろ止めよう。気が済んだのかはたく手を止め、最後に頭にぽんと手を乗せられ撫でられる。髪の毛ぼさぼさになっちゃったよ。一瞬 殴られると思った私は反射的に目を閉じてしまった。いやはやお恥ずかしい。 「ぐ、ぐろざきぐ…!」 「うぉ!ちょ、おなまえ?」 唸るように黒崎君の名前を呼んで、黒崎君にしがみつけば黒崎君が困ったように声をあげた。 「ゆずちゃんとかりんちゃんに会いたいぃぃぃ…ズビ」 「わかった、わかった!ちゃんと連れてってやるから!おま、今鼻水付けた?!なんか俺のシャツ濡れてない?」 「…………ごめんなさい」 「ちょ、はな、離れろボケェェェ!」 そう叫ぶ黒崎君ではあったけれど、背中に手が回されてる辺り矛盾した頼みだと思う。勢いってすごいですね。 (決してムッツリとかじゃあねえ。ヘタレでもねえ!今のは事故だ!不可抗力万歳!) 抱きつかれた時に柔らかいのが当たったのは内緒にしとこう 離す気ないけど |