×
「ここって…」 「俺ン家」 連れてこられたのは、どうやら黒崎君のお家らしい。いや見ればわかるけど。どどーんと黒崎医院って書いてあるんだけど。ていうか黒崎君てお医者さんの息子だったんだ。なんだか物凄く意表をつかれたような…。普通のサラリーマン家庭だと思ってた。私って黒崎君の事何も知らないんだなぁ。一つ新しい黒崎君を知ったみたいで嬉しいや。 「ここで、バイトすりゃいいんじゃねーの。勉強にも、ちったぁなると思うんだけど…」 「え、」 「俺から親父に頼んでみるから」 「ま、待って私も…!」 ずかずかと家の中に入っていこうとする黒崎君を考える暇もなく追いかけて一緒に玄関に入る。 「ただいまー」 「お、お邪魔します」 あがれよと言われ、頬を緩めながら黒崎君に向かいながらもう一度お邪魔しますと言って靴を脱いだ。ちゃんと揃えて、っと… 「イィィチィッゴオォォゥ!遅かったじゃないか!女の子とデートでもしてきたのか…な」 「あ、お邪魔してます…」 「がッ!!!」 挨拶をしながら頭を下げる。隣で黒崎君の溜息が聞こえた。 「あー、コレ親父な」 「うん、あの…」 お父様 硬直してるんですけど。 「うるっさいなー。いつまで玄関にいる気?ヒゲもいいかげんに…」 「おう。夏梨、お茶…」 「あ、お構いなく…!」 「ばッ!!!」 ど、どうした事か。私が声をかけたら二人とも石化してしまった…!黒崎君が2度目の溜息を吐いた。 「あの、私何か…」 「気にしないでくれ。わりぃな、こんなトコに立たせたままで…」 「それは全然構わないんだけど…」 目の前の2人をどうすればいいんだろう…。とにかく賑やかなご家族だと思った。玄関先からいつまでも動かない事を気になったのか、奥から可愛い女の子がお玉片手に出てきた。 「もぉー、みんなご飯だよー!お兄ちゃんも早く着替えて…」 「あ、こんばんは! す、すみません、食事前に…黒崎君やっぱり私…」 そこまで言うと遮るように化石と化していたお父様が瓦礫の中から這い上がるようにガバっと起き上がる。 「いえいえいえ、いやぁお見苦しいところをお見せしてしまって…ハハハ、こんな所ですがゆっくりしていってください」 「遊子、お茶!お茶!」 「はははい!あ、どうぞ中へ!」 「一兄のかの、かかか、かの、一兄のかかかかの、かの…」 「夏梨ちゃんも手伝って!ホラ!」 「一兄のかの…一に、の、かの…」 「息子よ、話がある」 「俺も親父に頼みが」 「何も言うな父さんは…」 「テメーが思ってるようなことじゃねえ!」 (何処のお嬢様を連れてきたっ!!) (井上の双子の妹だよ…) (何ィ?!妹?あのべっぴんさんが!) (あんま似てなかったねー) (オレぁてっきり織姫ちゃんの方だと…) (あーも、うるせぇーなー!) (一兄やるぅ!あんな美人さんよくゲット出来たね!) (私達の義姉ちゃんになるんだね!) (…だからちげーって…) (あ…あの、お湯沸いてますよ) (お父さんもしくはパパとお呼び下さい!) (え?) (なな何でもねえッッ!!) 黒崎君の3度目の溜息を背に、連れられるまま中へと足を進めた 賑やかな家の中 |