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ノイズ音がいっぱいに支配してて、時折、混じって聞こえる懐かしい声。段々、霧がかってる様な視界が晴れていく…。 懐かしいその声は、嫌い。その声の主は私が、嫌い。憎悪の世界が広がっている。辛辣な言葉を浴びる少女が、見えた。悪罵する大人が、見えた。小さな手を握り締めて、悲しみに歪む瞳を俯いて隠して、唇を固く結ぶ女の子と、大人達。一人の少女に、向ける瞳は嫌悪。幼い少女に送る言葉は罵詈雑言。あぁ…あれは、私。 時折、大きな声で叫ばれる…妬んでとか、恨むとか、私の気持ちを決め付けないで。どうして、私だけ、仲間外れなんだろう。灰色のヴィジョンに映し出される出来事。お兄ちゃんに手を差し出す少女を哀れんだ瞳で見詰めて、求められた希望を断ち切る彼。 アナタもワタシがキライ? 泣いてる、髪の長い女の子を抱きかかえて何処かへ行ってしまう。行かないで、助けて。妬むとかそんなんじゃなかった。違うのに、違うのに、私はそんな事思ってないのに、勝手に私の気持ちを決めないで。閉ざしていた唇を震わせながら彼女は紡ぐ、その気持ち。 「違う」 返ってきたのは、頬への痛み。ねぇ…どうして私は殴られたの?そんな瞳を、向けた。ただ不思議で堪らなかった、私の問いかけに答えて。そんな私の無言の問いかけに、短い悲鳴に恐怖の色を見せる、見開かれた瞳。再び、罵声が降りかかる。ただ、私は。 「近づかないで」 どうして…? 「あなたが居るから」 違う、私のせいじゃない 「恐ろしい子」 恐いと思われても構わない、私の言葉を聴いて。 「あなたなんて生まれてこなければよかったのに」 私を、ちゃんと見て。 届かない思い。私の気持ちも言葉も意味を成さない。最後にハッキリと聞こえた声が合図みたいに、目の前は白く染まって行く。 「……!」 目を見開いて目に入るのは見慣れた天井。上身を起こして辺りを見回してもあるのは、見慣れた壁、目覚まし、カーテン、景色。 「…あ…れ…っ…?」 紛れもなく自分の部屋。 「夢、だった……なんか疲れちゃった」 鮮明に思い出せるあれは過去の出来事。夢の内容を覚えているというのは予想以上に体力を使うものなのか知らないが、朝から体力の半分以上を睡眠の方に取られてしまったようだ。こんなことなら夢の内容なんて覚えてなくていい。むしろ覚えていたくない内容だった。いつもは夢見ても起きたら忘れちゃったり、夢を見ていたことすら忘れるくせに、こういうときばっかり調子いいんだから。寝起きから疲れた、だるい。 「朝から、最悪…」 背中に掻いた寝汗がシャツに染みて気持ち悪い。魘されてたのか、起きた時から呼吸が浅く、荒い。朝から一気にテンション下がる。懐かしいななんて思い出に浸れるもんじゃない。最悪だ。哀愁にしか浸れんよ。 「何時だ今……じゅ」 時計を見ると、長い針がおかしい数字をさしていた。いや実におかしいな。君は私が起きたら6をさしているのが仕事じゃないか。なのになんで、なんで10をさしているんだ長い針ィィィ! 「じゅうじ、半…っ、だと」 かんっぺき遅刻だ。皆勤賞を狙っていたのに…といいつつこの前も遅刻したばかりじゃんか! 姫ちゃんも起こしてくれればいいのに! 「…迎え、来たのかな…」 最近は毎日一緒に行ってるけど、前回の事もあり、また何かあったんじゃないかって気になってくる。結局あの日何が原因で姫ちゃんが落ち込んでいたのかは、教えてくれなかった。…私が原因じゃなければいいけど。 急いで準備しようとシャツに手を掛けた、けど 「どーせ遅刻か」 遅刻に変わりは無いので、急ぐという選択肢を捨て、のんびりと遅い朝食を摂る事にしよう。私はそれほどいい生徒ではなかった。優等生の欠片もないような生徒だ。姫ちゃんとくらべて、ね。自分で言っといてなんだけど溜息しか出てこない。自己嫌悪というやつだ。 「オムライスとかいいかな」 いや、確かこの前の特売で買った鮭がまだ残ってたかな。うーん。どっちにしよう。 「…オムライス、だな」 丁度卵は残り一つ…。鮭は晩御飯のおかずにしよう。ホイル焼きとかどうかな。帰りに卵と…そういえば明日は卵の安売り…。今日の買い物は止そうっと。買い物はとりあえず明日にして、行儀悪いと思いつつテーブルの上に制服を投げる。と制服が風を生み出しテーブルの上に乗っていた何かが落ちた。 「何だこの紙?」 ヒラリと落ちた小さな紙の切れ端を拾い上げ、裏表確認してみた。 「姫ちゃんの書置きだ」 気持ちよく寝てるみたいだから先に行きます。 しっかり休んどくんだぞー! 織姫 「やっぱ来たんだ…」 ホッと安堵の息を吐くのも束の間、一気に脱力。酷いよ姫ちゃん…。 起こそうよ。行かないで先に起こそう。大丈夫だよちゃんと休んでるから。授業中寝てるから。名前の後に描いてあるこの落書きは…クマかな?いや、ウサギ? 姫ちゃんの美的センスは凄いと思った。 「あー、もう休んじゃおっかなぁ…」 あ、でも今日数学があったな…。単位やばいんだっけ。だめだ。成績アヒルなんてイヤだ。ここはちゃんとご飯食べたら行こう。そんな余裕を持て余しながらフライパンに油を注いだ。 (い゙!油飛んできた!) 香ばしい朝の匂 |