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まさか、おなまえちゃんがそんな事を思ってたなんて、これっぽっちも知らなかった。ううん、知ろうとしていなかった。おなまえちゃんの事は解っているつもりだったから。黒い瞳にコンプレックスを持っていたなんてあたしは知らないし、おなまえちゃんからそんな事聞いた事もなかった。あたしは、綺麗とオか思ってなくて。周りが彼女の眼が恐いと思ってたなんて、哀しい事、知らなかった。あたしと、比べられる事を気にしてた…。今まで、そんな事あたしには話してくれなかった。もしかしたらあたしが聞いてなかっただけ?あたしは気付かない内に、無知のままに苦しめてた? おなまえちゃんのSOSに気が付かずに、今まで…暢気に笑ってたの? ぎゅっと下唇を噛み締める。何にも気付いてあげれなかったね。あたし、ダメダメだ。 「ダメな、お姉ちゃん…」 バカだあたし。本当無知で。結局のところ、何も知らなくて、知ろうなんて考えてなかった。全部知ってるって、自負してたし、だから…少しくらい気に留めても目を逸らしてた。あたしが一番知ってるって思ってた。ううん、思い込んでた。 おなまえちゃん達が居る下の階の踊り場に耳を傾けながら、膝に頭を預けていけないと思いつつもおなまえちゃんが吐き出す僅かな本音に神経を集中させた。 少し少し、ゆっくり吐き出される言葉は、彼女の優しさの表れで、こんな時でも言葉を選んでいて、胸の奥がきゅっと締め付けられた。誰も傷付けたくない、おなまえちゃんの悪い癖。こんな時くらい酷く傷つけてやった方がいいのに。おなまえちゃんは溜め込みすぎだよ。こんな時くらい、あたしを責めてよ。もっと自分に素直になってわがまま言っていいのに。黒崎君だって…。黒崎君だって、きっとそう思ってる。もっと迷惑かけて、わがまま言って、困らせて…素直になったらいいのに。変なとこばっか正直で。どうしてそこまで周りを気にしちゃうんだろう。とてもとても優しい 今度は黒崎君に嫉妬してるあたし 直らない悪い癖 |