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・・・・・ 47・・ 「そういえば今日なまえさんコート見に来てたでしょ」 夜ご飯の後、部屋へ戻るために2階へあがり部屋のドアの前まで来るとちょうど精市君が部屋から出てきて呼び止められる。手にパジャマがあることから見てこれからお風呂なのだろう。 「うん」 「どうして急に?今まで見に来たことなかったくせに、氷帝が試合に来たときでも」 「それは、」 仁王君に試合を見に来ないかって誘われたから、と口にしようとしてすんのところで押し戻した。危ない。仁王君に忠告されたことを思い出してよかった。氷帝の皆が試合に来ても見に行かなかったのも今まで丸井君のテニスを見てみたいと思っていながらコートを覗きに行かなかったのにも別に嫌だったわけじゃないし、見に行きたい気持ちはあったのだ。今まで行ったことなかったのが、精市君からの許可が降りなかったからという理由でもない。まあそんなことはいいのだ。 じとりと精市君に返答を急かされるように睨まれる。咄嗟に仁王君が教えてくれた精市君を封印できるという言葉を並べていた。 「せ、精市君の試合が見たくって!か、かっこよかったよ!」 「…え、……」 「きゃ、きゃはッ?」 「はあ?」 一瞬精市君の目が大きく見開かれる。けれど一瞬でその目は私をゴミと捉えたようなものへと変わった。うわああ間違えたああきゃはとかつい口にしちゃったよ仁王君のばかああああ!本当にきゃはとか言っちゃったよほんとぶっつけだな! 「今のきゃははそのあれだ…あれですつまり、」 「それ、本当?」 「ん?……ほんとだよ?」 「ふーんそうなんだ」 精市君は私のそばまでやってくると、ほっぺたをいきなりつねってきた。うっ、お馴染み…! 「いひゃひ!」 「まぁ俺ほとんど動いてなかったけどね」 「ひぇ…」 ぱっとほっぺたをつねっていた手が離れて行く。はてなマークを頭の上に飛ばしながら精市君を見ると私と居る時には珍しい機嫌のいい顔をしていた。 「精市君って、単純?」…頭の中で考えていたつもりなのだがどうやら口に出していたみたいで、うるさいと軽くチョップされた。脳天をさする私を尻目に精市君はそのまま下へ行ってしまう。残された私の顔が熱いのは何故だろうか。 (言ってみるものだなと) 今回限り |