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・・・・・ 45・・ なんとか宮城さんを説得して、一緒にテニスコートに向かえることになった。よかった。若干涙目になった私を見て宮城さんはそんな嫌なら断れば良かったでしょと溜息を吐いた。別に嫌なわけじゃないしテニスの試合見に行きたいし…ギャラリーが怖いんだよ…。 コートへ向かうと、既に女の子たちがフェンスを囲んでいて吃驚した。 「あいつらのどこがそんなにいいのかね…」 「テニスが好きなんだよ」 「んなワケないでしょ。顔目当てで集まってんのよ。あと自分アピール」 そう吐き捨てるように口にした宮城さんは私の手を強引に引っ張ってずんずんとフェンスの周りに群がっているギャラリーへ近づいて行った。 「柳生も柳生よ、誘ったならそれ用の席くらい用意しなさいよね」 「い、いや誘ったのは仁王君…見た目が柳生君の…」 ここでいい?と私に訊いてくる宮城さんに頷けば。解ったと一言返してその場に腰を下ろした。地べた…! 「宮城さん立って!」 「え?ずっと立って見てろっての?」 「そうじゃないけど、とにかく立つ!」 渋々、宮城さんは私の言うことに従って腰をあげる。そこにタオルを敷いてやる。こんなことに使って申し訳ないという気持ちが少し胸に残った。体育で使ったやつで申し訳ないとも思ったけど。 「タオルが汚れるよ」 「いいよ、どうせ今日洗濯するんだから」 宮城さんはおとなしく私が敷いたタオルの上へ再び腰を下ろしてコートへ目を向けた。コートの中に向ける前に左右を確認してみると、先程までテニス部員の誰かの名前を呼びながらきゃあきゃあ騒いでいた子たちが遠くの方に移動していた。 宮城さんを見ると、ドヤ顔で女の子達を一瞥していた。そういえば宮城さんって女子取締役なんだっけ。本人に言ったら絶対怒るから口にはしないけど。 「悪いことしちゃったかな…」 「別にいいんじゃない?」 「……そっかぁ…」 まあ、あの人たちに退けと言ったわけじゃないし。別に何もしてないわけだから悪く思う必要はないのかも。いやでもここって結構よく見えるポジションだよね。それを思うとあの人たちにやっぱり悪いことをしてしまったと罪悪感が湧いた。 でもでも宮城さんを前にして離れていく人たちの行動も失礼なんじゃないだろうか。それを思うと別にこっちは何も気にやむことはないだろう。と思うけど、試合を見やすいこの位置を先に陣取っていたのは彼女たちで……… 「何ごちゃごちゃ考えてんだか知らないけど、あっちで丸井が呼んでるよ」 「えっ」 ほら、と差された方を見れば丸井君がフェンス越しに手招きしていた。 「行ってきな」 「え、宮城さんは」 「あたしを呼んでるわけじゃないでしょ。ここを死守する役目に徹しまーす」 死守って……。とりあえず未だに手招きしている丸井君のとこに行こう。 「お前が見に来るとか珍しいね」 「うん、多分初めてかもしれない」 「部長の許可が下りたの?」 ニヤニヤしながら訊いてくる丸井君に何のことだと首を傾げる。うーんと頭を捻らせればそういえば丸井君がテニスしてるところを見てみたかったということを思い出した。それを精市くんに却下されてしまったことを思い出した。14話参照という声が聞こえた気がした。 「いや、仁王君に誘われて…精市君の許可とか忘れてたよ」 てか別に精市君を見に来たわけじゃないしね。別に精市君の許可とかいらないもんね。私は仁王君と柳生君を見に来たんだもんね。あと今思い出した丸井君。 「ジローが尊敬するのが丸井君だってこと最近身近過ぎて忘れてたよ、すごいね」 「すごくねーだろぃ」 「うわ、何かドキドキして来ちゃった!丸井君が目の前にいる目の前にいるんだよ、これからテニスするんだよ…っ!」 「何この恋する乙女」 「別に丸井君に恋してるわけじゃないけど」 ケータイを取り出して目元でピースしてる丸井君をカメラに収める。そしてそこからメール作成画面を出してジローに送ってやった。ああそうだ丸井君ってテニス部だ。なんて丸井君のユニフォーム姿をまじまじと見ながら思った。いつも教室で喋ったりするくらいだからなあ。仁王君とはテニスの話もしてるけど。 「この前氷帝来てただろ。見に来なかったの?」 「え、うん。ジローたちとファミレス行くってなって学校には居たけど」 「ふーん」 「なに?」 「俺らは誘わないんだなって思って。まあ水入らずってことなんだろうけど?」 「ご、ごめんね」 「いやー別にいいですよー今なまえ独占してるの俺らなんだし、たまにはな」 「こ、今度は丸井君たちも誘うね!」 「芥川も俺に丸井君丸井君って騒いでたのに飯の誘いはなかったなー」 「丸井君は根に持つタイプじゃない!男らしいっ男らしいよっ素敵だな!丸井君素敵だなぁ」 「…まあ別にいいけどね?」 なんとか丸井君をなだめる。そうだよね、丸井君はジローの憧れの人で私の友達だもんね。誘わないなんて私ってばひどいことしちゃった。真剣に反省してたらぷ、と吹き出す音がして俯かせていた顔をあげれば丸井君がグーにした拳を口元に宛てがいながら笑っていた。 「冗談だって!そんな本気で悪いことしたみたいな顔するなって」 「も、っもう!でも次は誘うからね!」 「そん時は俺も誘ってくれ」 「仁王、」 「よっ、来たんじゃな」 「うん。誘われたしね」 相手校のことを丸井君が話してくれるのを聞いていると、少し遠くから「丸井せんぱーい、仁王せんぱーい」の2人を呼ぶ声がする。どうやら相手の学校の準備が出来たらしい。それをきっかけに2人は会話を切り上げ、レギュラーが整列している中へ向かっていった。私も宮城さんのところへ戻って試合が始まるのを待つ。試合はまだ始まっていないっていうのにもうすでに黄色い声援が飛んでいる。流石王者立海と言われてるだけある。練習試合なのにこの応援の力の入れよう…………いや、跡部コールも負けてないわ。氷帝の応援もこんな感じだったわ。なんか懐かしい気持ちになってしまう。跡部コールを目の当たりにした時はドン引きしてしまったし、立海と比べてもインパクトは跡部の方が勝っているかも。 (そのへんポイントです) 跡部限定 |