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・・・・・ 36・・ ぐいっと口元を拭った丸井くんは「天才的な一気飲みだったろぃ」と得意げな顔を見せた。空のペットボトルを握ったまま、もう片方の手で私の襟首を引っつかんだ丸井くんはズルズルと私を引きずるように教室へ進んでいく。 「え、ま、何…!?」 いじめっ子というかガキ大将というか…彼は聴く耳持たずで鼻歌まで口ずさんでいる。ちょっと丸井くんんん! 「…ジャイ太とのび子じゃ…」 後ろで「さしずめ俺はスネ治か…? いや、しず治ちゃん…」という仁王くんのどうでもいい呟きというか葛藤が聞こえた。本当にどうでもいい。 丸井くんが足を止めたのは我らが3Bの教室の前だった。丸井くんもといジャイ太は乱暴にドアをドアを引くと、私の襟首を持ったまま教室の中に投げ入れた。いや投げ入れたはおかしいな、私の首はいまだに開放されていない。 クラス中の視線が私と丸井くんに注がれる。 「え、なに…?」 「誰かコイツの机とイス外に出して」 「えっ!?」 ぎょっとする私とは裏腹にジャイ太こと丸井くんは満面の笑みでクラスを見渡していた。みんなに混乱が訪れた…のもつかの間だった。 「みょうじさんいじめ?」 「え、マジで、何それ」 「面白そうなんですけどー」 混乱もつかの間、教室に残っていた(大半が女子)クラスの人たちが興味を示し面白さを見出し始めてしまった。ノリのよさをここで出さないでくれようううう。たまにちょっかい出してくるやっかいな女子たちのことだから、こういうことに真っ先に乗るに決まっている。彼女たちは私を好いていないから。 彼女たちは何の詳細も聞かずに、せっせと私の机などを廊下に出していく。 何これ、何なのこの状況。何でこんなことになってんだ、丸井くんの頭の中ってどうなってるの! わたししずかちゃんタイプだからジャイアンの思考回路なんてわからないよ! あなたは一体何をなさりたいの、そして彼女たちは事情も聞かずに何なのですか…! 「うし」 「うし、じゃないよもう何がしたいの!」 「みょうじそこ座ってー」 「ここ座るの!? いじめ!?」 まーまー、と適当になだめられ、半ば無理矢理廊下に放り出されたイスに座らせられる。 この、廊下のど真ん中(といってもイスの背は壁とぴったりくっついている)で席につけと! 鬼かっ! 助けを求めるように仁王くんを見れば、口元を押さえながら震えていた。 (叱られた生徒みたいな) 私、涙目 |