走る | ナノ
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・・・・・ 34・・

数日後

ニチニチソウの芽が出た。
今日はいつもより部活を早く始めるらしく、普段よりも40分も早くに家を出ていった精市くんは玄関を出るときに、「うちの副部長がやけにはりきっちゃってね、部長差し置いて熱くなりすぎ…あ、そういえばニチニチソウの芽が出てたよ」、と(前半の方が本題っぽい)言葉を残していった。ので、とりあえず精市くんが家を出た後に庭に出て、私のために設けられたスペースを見てみると確かに薄い緑色が土の上からぴょこんと顔を出していた。

「これ、ニチニチソウなんだ…」

精市くんが教えてくれなかったら雑草だと思って引っこ抜いていたかもしれない。あぶないあぶない、危うく(ご想像にお任せします)になるところだった。芽が出たらなるべく早くに花壇に移せという精市くんの言葉を思い出す。
このまま順調に育ってくれますように、そんな気持ちを込めながら鉢から花壇へと丁寧に移動させ、水をまいた。




「みょうじ…おはよ」
「おはよー」

朝から丸井くんの机の上にはたくさんのお菓子が積み上げられていた。いつも以上に高く積みあがっているその山を見ながら感嘆のため息を漏らす。いつ見てもすごいと思う。よくこんだけお菓子集められるなー。…仁王くんは「顔がええ奴は得やのう」なんて言っていた。だったら仁王くんもかなり得してるんだよなぁ。
そんなことよりも、こんなにたくさんのお菓子を目の前にしているのに、朝からげっそりしている丸井くんが珍しい。

「虫歯にでもなった?」
「何の話だよぃ」
「お菓子こんなにあるのに何で疲れてるの?」
「お菓子だけじゃ回復できない時もあんの」

お前は俺を何だと思ってんだよ、そう言いながら両手にドラ焼きを持った丸井くんがため息を吐く。ドラ焼きを両手に持った人にそんな事言われても困る。
とりあえずごめんねと一言軽く謝っておいた。すると彼は私の謝罪をスルーして、それがよお…とここまでにあったことを話しだした。とにかく話たいらしいので黙って聞くことにする。私って優しい。

「今日はいつもより部活が早く始まったんだけどさー、もー真田の奴がはりきっちゃってはりきっちゃって…真田ってうちの副部長な」
「すっげーおっかない奴ぜよ」
「あ、仁王くん。おはよ」
「おお、お前いつも以上に死にそうな顔になってんぞ」
「普段から死にそうな顔なんかしとらん」
「まあ、とりあえずさー、そのおっかねー副部長が超やる気で」
「こっちはいい迷惑ぜよ。俺朝弱いのにな」
「仁王が朝弱いとかどうでもいいんだけど、問題は幸村くんなんだよ」
「精市くん?」
「幸村のやつ部活に30分も遅刻してきての」
「でもいつもより40分も早く家出てたよ?」
「おっまえ、幸村くんの家からここまで何分かかるか計算してみろぃ」
「……あぁ」
「副部長がそれで怒っちゃってよ、部長たる者が遅刻なんてふざけてんのかーってな具合に」
「たるんどるー」
「たるんどるー」
「そのフレーズどっかで聞いた」
「幸村くんもさ、てめーこそこんな早くからふざけてんのかーってなっちゃって…怒っちゃったんだよなー」
「暑苦しいよ真田…」
「仁王それ似てない」
「プリッ」
「もう今日の朝練はマジすごかった」
「スーパーサイヤ人どうしの戦いかと思ったぜよ」
「そこに赤也が巻き込まれて面白かったよなー」
「真田の血管が心配じゃ」
「どっか切れたんじゃねぇ?」

それから二人はテニス部の内輪話を始めてしまって、私はひまになってしまった。ので丸井くんのお菓子山から一つお菓子を抜き取って静かに食べてた。はやくHR始まってくれないかなー。テニス部の話付いていけないよ。柳生くんとジャッカルくんくらいしかわかんないし。テニス部のルールも知らないし。何度か柳さんって人の名前を耳にしてるけど誰なのか知らないし。新しく出てきた赤也さんって人も知らないし。もう寝ちゃおうかな。


(いつの間にか昼だった)
起きたら