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・・・・・ 33・・ 「でさあ、仁王とみょうじってできてんの?」 お昼時、丸井君は仁王君のお弁当のおかずを見ながら突如そんなことを訊いてきた。できてるとはあれですか、私と仁王君が付きあってるとかそういう類のできてるですか。できてないできてない。私と仁王君の間には友情以外なにも出来上がってませんよー。そう丸井君に伝えれば丸井君は仁王君のお弁当箱に入っているから揚げを狙う手を止めてきょとんとした目でこっちを見てきた。 「あ、そうなの?」 「つーか、どこを見ればなまえと仁王なんかができてると思えるの」 「宮城さん、その なんかって部分には私も含まれてるんですかね?」 「俺はなんかで構わんのか」 「いや、そういうわけじゃないけど」 「薄情な友達じゃ」 「仁王黙ってうるさい」 「すんません」 宮城さんが、あんた頭いかれたんじゃないの?的な顔をしながら目を細めて丸井君を見る。丸井君の手が止まってる間にも宮城さんの手は止まることを知らないみたいに、次々と白米を箸で掬って口へ運んでいく。よく噛まないと消化によくないと思う。それにしても今日は白米だけなのか。私のおかず分けてあげようかな…。半分も残ってないけど。 「あー、じゃあ何だ? キス友?」 ぶふっ、と何かが噴出した音がしたと思ったら空中にきらきら光る米粒が舞って、丸井君の頭の上へ着地した。付着ともいう。 「うっわ、きったねえなこのクソ女!」 「き、汚いのはあんたの口でしょ?!」 「んだとこのやろ、てめえご飯時に下品すぎんだよ! なんだぶふって、どこの漫画のキャラだっての!」 「あんたがいきなりバカなこと言うからでしょ!! 何キス友って?!」 「いやだって、仁王がみょうじにキスしたって朝話してたんだよぃ」 「いやいやいやいや! 誤解! それミステイクだから!」 「いやキスしたんは事実じゃろ」 「そういうね、言わなくていいことは言わなくていいの!」 「な、なかったことにするんか…あんなに喜んでくれたのに」 「仁王君ほんとうるさいよ、黙ろうね?!」 ひどい…とお弁当を食べる手をだらんと下げてついでに頭も下げて項垂れ始める仁王君と、顔を真っ赤にしながら慌てる私をただ呆然と見守っていた丸井君が「やっぱ付き合ってんじゃねえの?」と小さい声で呟いた。宮城さんはただ何も言わずに私を見ていた。 「え、マジで?」 「マジじゃないです!」 「なまえ、仁王だけはやめた方がいい。こいつ絶対性病持ってる」 「殺すぞ」 「そういうことをお食事中に言うのはどうかと…」 「いい? キスはいいけど絶対それ以上いくのはやめなね」 「お前がやめろ」 「ていうかキスしてないから! なんでそういうことはあっさり信じるの?!」 「したじゃろー、友達の証として瞼に」 瞼かよ!と二人のつっこみが綺麗に重なった。 「瞼なら大丈夫ね」 うんうん、と頷き合ってる丸井君と宮城さん。えっ? ちょっと待って、瞼にキスって割と普通なの? 私一日中悩んだんだけど、今時普通なの?信じられない。ショックで軽く眩暈を覚える。最近の若者は一体どうなってるっていうの。瞼にキスは大丈夫って大丈夫じゃないよ、全然おっけーじゃないし手首噛んでくる人もいるし何この温度差。 「何で俺っていつもこういう扱いなんじゃろ…」 「だって仁王だしな」 「いっつも軽口ばっか叩いてるからだよ」 「おまけに頭も体も軽そうだしねー」 「俺、ジャッカルと親友になってくる」 (どーぞ、早く行けば?) 赤毛一言 |