走る | ナノ
×


・・・・・ 32・・

「羨ましいってこと? なんで?」と、朝一で仁王君に問いただしたところ彼はあっけからんと「言ったじゃろ、お前さんのそういうとこ好きじゃって…尊敬の意を込めたナリ」とやれやれといった感じに口にした。なんっちゅうわかりづらい表現をしてくれたんだ! ていうか結局よくわからないし! はぐらかされてるし! こちとら一日中悩んだし、精市君には手首噛まれたんだよ! いや噛まれたのは仁王くんのせいじゃないけどさぁ!

「でも憧憬のキスなんてよく知ってるね。仁王君て意外とロマンチスト?」
「プリッ。男はみんなロマンチストぜよ」
「なに、お前仁王にキスされたわけ?」
「うわああああっ!」

ポッキーを両手にいっぱい握った丸井君が、椅子を足で引きながら「そういう関係だったの?」とたずねてきた。もちろん違う。座った丸井君がおかしそうに笑う。

「朝から元気な、みょうじって」
「丸井君、だ!」
「丸井君でーす」
「今日は早いのぉ」
「いや、いつも遅いのお前だろぃ」
「そういえば最近仁王君朝早いよね」
「この前まで着替えんのすっげ遅かったくせに」
「早くみょうじに会いたくて」
「仁王君と話すのたまに疲れるよ」
「みょうじさんは今日もつれんのー」
「お前はいつもつられてばっかだけどな」
「俺のイメージが悪なるからやめて」
「…元々悪くね?」
「俺ちょっと優しい友達を探してくるナリ」
「すねてんじゃねーし、キモイ」
「丸井君は今日も冷たいぜよ」
「あ、そういやみょうじおはよ」
「おはよー」
「俺には」
「さっさと新しい友達探してくれば?」
「…ひどい…」
「なんか私、最近ね仁王君の軽口に慣れてきた」
「おっ、仁王言われてんぞ。手の内晒しすぎたんじゃね?」
「誤算ナリ」
「君たちは私を甘く見すぎです」
「甘く見せてんのそっちだろぃ」
「あー、戦略ってことで」
「そんな腹黒キャラだったっけ、お前って?」
「幸村と宮城に汚染され過ぎじゃ」


(路線変更な朝の会話)
普段通り