走る | ナノ
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・・・・・ 21・・

花壇をあとにして、図書室で時間を潰す。今日の夜にでもしようと思っていた予習をここで済ませておく。今日はゆっくり出来そうだ。まあいつもゆっくりしてるようなもんなんだけど。
勉強はちゃんと理解できれば結構楽しい。正しい答えを出せない時は勉強なんて大嫌いだけど、ちゃんと答えを出せれば勉強も苦ではない。授業の予習復習を済ませたついでに宿題も終わらせれば、ちょうど下校のアナウンスが流れた。広げた教材を鞄に詰めていると、机の上に置いていた携帯が振動した。
液晶には新着メール1件の文字。

「仁王くんからかな」

メール画面を開くと、そこには予想通り仁王くんからのメールが1件。“今どこ?”と簡潔な文章がそこには表示されていた。件名には“たまえ”と書かれていた。件名に“お疲れさまー”と書いて、“図書室で待ってた。今からそっち行くね”と本文に打って送信。携帯を折りたたんだところでまた新着メールが届く。返信はやっ! いつもは10分くらい間を空けての返信だったから、1分以内にメールの返事がきたことに吃驚した。

“校門で待ってる”
件名はRe:お疲れさまー、だった。

「みょうじ! こっちじゃ」
「ごめん、お待たせしました」
「いやいや、」

校門の前に、銀髪と七三分けのお兄さんを発見。同い年なのに、2人が並ぶとほんとに年上みたいで変な感じ。自分が子ども扱いされてるようで、変に恐縮しちゃう。

「柳生、コイツがさっき話してた」
「ああ、先ほどはありがとうございました」
「いえいえいえ! 私は別になにも‥!」
「私は柳生 比呂志と申します」
「みょうじ なまえです!」
「そしてたまえ中毒な」
「に、仁王くんっ!」

軽く睨んで仁王くんを黙らせる。流行語にでもする気ですかね。
後日聞いた話によると、柳生くんの私への第一印象は“空気のような女”だったらしい。え、私ってそんなに地味だったっけ? く、空気‥‥‥!

「空気のように自然体なお嬢さん、って意味で言ったんですよ! 私は」
「空気のように自然体すぎて地味って意味じゃろ? 同じじゃろ」
「違います! 誤解を招くような単語だけを伝えないでください!」
「自然体ってあたりから意味不明なんじゃけど。比喩がようわからん」
「飾らなくて、感情を素直に出せる子だなあ、と」
「つまりガキだと‥‥」
「からかうのはよしたまえ!」
「たまえじゃー! テニス部名物のたまえじゃ、みょうじに知らせんと」


(本当の意味など知らず)
不明です