走る | ナノ
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・・・・・ 11・・

「………わ」

立海の制服を着てみたはいいんだけど。見事に似合ってない。氷帝の制服がもう懐かしいや。うわぁ…付き合ってくれた仁王君も固まったまま凝視してるよ。

「見事に…似合いませんでした」
「いやいや、結構似合っとるよ」

氷帝のが似合ってたけど。そう言って苦笑いしながら頭を撫でられた。慰めのつもりですか。

「ちょっと大人っぽい、かなあ」
「お前さん童顔じゃもんな」
「………」
「…そろそろ俺も昼とするかな。お前さんも来るか?」
「あ、いえ! 大丈夫です、ありがとう」

また今度ご一緒させてください(厚かましくも)と頭を下げて仁王君と別れた。お昼、食べれそうにないなあ。お腹すかないや。勉強にも身が入りそうにないや。疲れた。自分の席に座って教科書一式を取り出して予習とかしてみる。全然頭に入らないけどいい時間つぶしにはなるだろう。10分くらいたった頃にぞろぞろとクラスメイト達が教室に入ってきた。友達早く出来るといいなあ。教室に入ってきた数人の子が私を見つけるなり吃驚したような顔をした。 ………?

「制服着替えたんだねー」

一人の女の子が喋りかけてきてくれた。それに続いてその子のグループの子も私の周りに集まってくる。再び緊張の波がぐるぐる押し寄せて言葉が途切れ途切れになったりで、すごく怪しい人になってしまった。

「う、うん」
「氷帝の制服の方が似合ってたのにねー」
「氷帝の制服って可愛いよねえ、うらやましー」
「ごめんねーうちの制服こんなんで」
「あはは、いえてる!」
「そ、ん…そんなことないです、立海の制服可愛いです」
「いいよそんな遠慮しなくて! 立海の制服って地味じゃん」
「……え?」
「そうそう! うちらの制服って着る人選ぶしー」
「その点、氷帝のって誰にでも似合うよね」
「それに氷帝でしょ? 金持ち校じゃん」
「そうそう! みょうじさんて氷帝からきたんでしょ?」
「あ、はい」
「お金持ちみたいなのに何でうちの学校なんてきたのー?」
「(立海も充分金持ち校だと思うんだけど)、親の転勤で」

きゃははと楽しそうに周りにいる子が笑う。みんな派手めで可愛い子ばかりだ。私には似合ってない制服が彼女達には似合っている。似合う、というか馴染んでいる。可愛いと思った。私は可愛くみえないのに、立海の制服を着ているこの子達は可愛いと思った。やっぱり制服って馴染んでくもんなんだなあ。氷帝の制服が似合っていたのは、“馴染んでいた”からなのかもしれない。

「えー!なんで親と行かなかったの?」
「転勤先が、海外だったもので…」
「あーそれでこっちにきたんだ」
「えっ! じゃあ今一人暮らし?」
「何それ超うらやましいんだけどー!」
「ちょっとみょうじさんの家使わせてよー!」
「使わせてってあんたラブホ代わりにする気でしょ」
「だってぇちょうどいいじゃん!」
「やらしー」
「ていうかそこ食い付くんだぁー」
「…一人暮らしじゃ、ないんです」
「あ、そうなの」
「ざんねーん」
「残念ってあんたえっろー」
「健全な女の子なんですぅ」
「あははっ」
「‥‥‥っ」
「そういやさぁ、氷帝って言えば跡部って人いるじゃん」
「あー! あの超イケメンの!」
「みょうじさんさあ跡部様と知り合い?」
「‥‥‥‥」
「紹介してよー」
「あんたじゃ相手されないって」
「でもさ、跡部って色んな噂あんじゃん!」
「女関係でー?」
「あたしもその中の一人でいいからさー関係持ってみたーい」
「それ、わたしもー!」
「自慢になりそうだよねー」
「ねね、みょうじさん紹介してくんない?」
「や、めて…」
「え? なんか言った?」
「…ううん、何でも。ごめんなさい」


(丸井くんとすれ違った)
飛び出す