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一学期の終わりと夏休みの始まりを告げるチャイムが鳴り響くと同時に教室中が歓声に包まれた。 歓喜するクラスメイト達を眺めながら、先ほど渡された通知表をそっと鞄にしまう。休みの間ちゃんと勉強しよう、うんうん。決意を胸に抱きながら隣の席の忍足を見る。白石と話してる忍足は今日も眩しい。頭じゃなくて、笑顔が。いや頭も相変わらず眩しいけども。 言いたい言葉が喉に突っかかったまま出てこない。一緒に海とか祭りとか行きたいな、とか。夏休みに入ったら毎日顔見れなくなるの寂しいなとか。どこかで会いたいなとか。 夏休みを迎えるのは嬉しいけど、忍足不足になりそうでちょっとだけ素直に喜べない自分がいた。 忍足達の方から、全国という単語が聞こえてくる。全国大会を控えた忍足達の邪魔はできない。全国大会の話をする忍足は眩しいほど輝いてるし、頑張ってる忍足は眩しいほどかっこいい。ダメだ、暑さで脳がやられてしまったみたい。忍足が眩しくて推したいしか思考できない。ただ一つ確かなのは、忍足の事を全力で推し…じゃなくて、応援したいわけで、私にかまけてる時間なんて忍足にはないわけで…… 「名字は何か夏休み予定あるんか?」 今まで白石と話してた忍足が急に話を振るものだから一瞬反応が遅れてしまう。どうやら白石との話は終わったらしい。セルフでどんどん暗い気持ちになってたところだったから、他に考えが逸れてよかった。 「予定かぁ…今のとこ友達と遊び行くくらい?」 あとは学生の本分である学業に専念します。と続ければ「真面目か!」と忍足が言う。そう、夏休みの私は真面目に生きるのです。 「俺と遊びに行く予定は?」 「……ん?」 頬杖を付きながら忍足が口角を上げる。 「遊びに、行っていいの…?」 「ん?」 上げられた口角は下がり、代わりに片方の眉がぴくりと上がった忍足が、不満げな表情と共に今度は私に疑問符を投げかける。 「だ、だって全国大会…」 「アホ、たまの息抜きも必要やっちゅー話や」 さっきよりも落ち着いた声で「真面目か」と口にした忍足にわしゃわしゃと頭を撫でられる。 「忙しいだろうし、テニスに集中したいと思って…」 「オフの日くらいあるわ!」 「そ、っか、そうだよね」 「せっかくの夏休みやし彼女との時間も大事にせな」 忍足のせいで乱れてしまった髪の毛を手櫛で整えながら、忍足の言葉を自分の中に落とし込む。さっきまでの小さな憂鬱が消えていくように、うずうずとした気持ちが沸いてくる。 夏休み中も、忍足と会えるのか。 「夏休み中、忍足に会えないの寂しいなって思ってたから、嬉しい」 痛いくらい上がってくる口角を押さえるように頬を両手で包みながら、机に頭を預けて忍足を見上げる。吃驚したように目を見開いた忍足と一瞬視線が交わうけれど、パッとすぐにずらされてしまった。眉を下げながら口元を片手で覆う忍足の頬は心なしかほんのりと赤みがさしているような気がする。 困ったように目線を泳がせる忍足の口元を隠している腕に手を伸ばしてみる。どうしようとも考えずただ伸ばした手は、いとも簡単に忍足の指に絡めとられてしまって。絡んだ指にきゅっと力が込められれば、心臓を掴まれたような気がしてきた。胸の奥が、むずがゆいような、こそばゆいような。 力が抜けたような声で、ぽつりと「そんな、」という言葉が吐き出された。言葉の続きを聞き漏らすまいと耳を澄ませながら、じっと見つめていれば、ゆっくりと顔をこちらに向けた忍足と何秒かぶりに目が合う。観念したとでも言わんばかりの目が真っすぐに向けられる。 「急に可愛いこと言うなや、照れるわ」 照れたように呟く忍足に、今度こそ心臓が掴まれてしまう。そのまま鷲掴みにされて、握り潰されちゃう日が来たらどうしよう、なんて。そんな心配を頭の隅で抱えながら、お返しと言わんばかりに繋がった手に力を込めてやった。 こっちのセリフだし、こっちが照れるわって話なのよ! /夢主が気付いたらただの忍足バカになってしまってて、こんなキャラで書いてたっけってなりました。 それと全然ツムツムしてなくてタイトル詐欺じゃんってなってるし、たぶん周りのクラスメイトはイチャついてないで早く帰れと思ってる |