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6 「大したもん出せなくて悪ぃけど」 「ありがとう」 道端で一向に泣き止む素振りを見せない私に痺れを切らしたのか、銀さんは何かを吹っ切るようにその場で「だァァァァァアア!!もォォォォ!!!!」といきなり叫ぶと無理やり私の手を取って歩き出した。私のことなんてお構いなしにズンズンズンズン進んでいくものだから、ビックリして涙も引っ込んでしまった。ちょっとあの銀さん、私さっき転んで腰とか足とか痛いし、手とか擦りむいてんですけど、体中痛いんですけど!!!引っ張らないでもらっていいですかね?!なんて抗議もむなしくスルーを決め込まれてしまった。もうちょっと労わってくれてよくね?! ―――そして連れてこられたのが、万事屋銀ちゃんの看板が掲げられた家だった。 目の前にはお茶。銀さんの前にはなんだか薄い桃色をした飲み物…この甘ったるい香りは、苺牛乳だ。自分だけ苺牛乳飲むなんて!!大したもん出せなくて、とかいう割に自分は大したもん飲むんですね? 恨めしそうに銀さんに目を向ける。彼はふんと鼻をならし「オメェに飲ませる苺牛乳はねぇよ」と何の躊躇いもなく、ごくごくと喉を上下させながらグラスの中身を飲み干した。 あ、ありえない…信じらんないさいてー! 「ほら、手ェ出せ」 「手当くらい自分でできるから」 「いーから貸せって」 そう言ってまたしても無理やり手を掴まれる。銀さんの指が、右手の親指の付け根を押さえる。 「痛い…」 「うわあ痛そうな色」 改めてよく見てみると、さっきまではなかった大きな痣が出来ていた。青紫に変色していてとてもかわいそう…痛々しい…私の白魚のように綺麗な手が…。きっともう少し時間がたつと黒くなるやつだよこれ。もう一回押していい?、そんなふざけたことを言う口を激辛キムチでも突っ込んで塞いでやりたいわ。想像したらうける。 救急箱から消毒液を取り出し慣れた手つきで私が擦りむいた右手の手当をしていく。 「ッ…しみるっ……!」 「………、…」 ピタリ。銀さんの動きが止まる。どうしたんだろうと顔を上げると銀さんと目が合った。お、おう…そう発した銀さんの声が震えている。 「どうかした?」 「いや、」 消毒液を乾かすように傷口に息を吹きかける。あー痛い!しみた!!銀さんは中途半端に動きを止め私の顔をまじまじと見たまま動かなくなってしまった。仕方ないので自分で絆創膏を貼る。や、やりづらい。 未だに固まったままの銀さんに目をやると、かすかに頬が赤くなっている気がする。気がするだけかもしれない。引きつった笑顔というか、にやけるのを我慢しているような、顔。なんていうか、気持ち悪い………。 「なに?」 「今の、痛がった顔…すっげーそそるんだけど」 「………変態」 |