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とりあえず今日だけは跡部の家に泊まることになった。もちろん私の家には女友達の家に行くと連絡を入れてもらって。 「いい、絶対そのアイマスク外しちゃダメだから!」 「お前の身体に興味なんてないし、こんなの見慣れてンだよ」 「だああああいいから!」 跡部のふしだらな発言に思わず赤面してしまう。あんたはよくても私がダメだからね、気持ち的に!こいつが私の身体に興味がなくても、女の人の身体を見慣れなれてても私には関係ないのだけど、今回見られるのは私の身体なわけであって同意の上で見せるわけじゃないのだ。うん、ダメ、絶対ダメだ。プロポーション抜群な私に見られちゃまずいものなんてないけどダメなのだ。 「お前の幼児体系に興奮出来るのは忍足くらいだぜ?」 身体が元に戻ったらいの一番に思いっきり股間に一発くれてやろうと決めた。 跡部の部屋にあったアイマスクを無理やり私の身体に入っている跡部に被せた。とりあえずはこれで安心。 跡部の寝室のシャワールームに入る。シャワールームでかっ!ここはホテルですか?! まず跡部を座らせて頭からお湯を被せる。頭を洗うために手のひらでシャンプーを泡立てる。どうしよう、自分の身体洗うだけなのに何でこんなに手が震えるんだろう。自分が跡部の身体になってるから? 少し目を動かすとすぐ傍に鏡。今の私たちの姿を見ると奥底に熱いものがこみ上げて来て、鼻の奥をつんとつついた。何でこんなことになってしまったのだろう、どうしてこんな状況になっちゃうの。 羞恥心よりも罪悪感に似たものが胸の中に満ちて来て涙が出るかと思った。 何も考えないように自分の身体を洗うことだけに専念した。自分の身体なんだから欲情なんてしないし。 目の前の跡部が小さく熱い息を吐いたって関係ないんだから、これは私の身体なんだから。 「悪い、こんなことになって」 「……え…?」 「お前が不安なのも、こんなことしたくないのも、解ってる」 「跡部は悪くないじゃん」 「お前だって悪くない。ただ、何も出来ない自分が不甲斐ないと。お前のことを泣かすようじゃ俺様もまだまだだな」 「なにそれ…アイマスクしたままじゃ全然かっこついてないんだからっ…」 「これだけは約束してやる」 「な、に…」 「お前には絶対に迷惑はかけない。全身全霊でお前を演じてやるから、安心しな」 そんなの、余計プレッシャーかかるんだよ。 跡部の身体を洗い流すシャワーの音に紛れて小さな嗚咽が漏れた。跡部に出来ても、私がどんなに頑張っても完璧な“跡部景吾”は演じきれないんだよ。跡部みたいに何でもかんでも完璧に出来ないよ。 跡部に服を借りて今度は私がっていうか跡部が跡部の身体を洗う番になった。 「何で隠すんだよ、俺の身体だろうが」 「や、だってさ、本能?みたいな?」 「いや、お前はアイマスクしなくていいだろ」 「ここは公平に行かないと」 「洗いにくいだろうが。俺様は誰にどこを見られようと動じねぇんだよ」 「うゎお、ドン引き」 跡部は普段通り不適に笑うのだけど、やっぱり私の顔でその表情は似合わないと思った。 ← → |