1周年記念:お題で夢を書く:跡部中編 | ナノ
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余裕な顔しながら足を組む私は、私じゃないような気がしてくる。私なのに表情一つで自分の顔じゃないみたいだ。なんか頼もしい…あれ、それって私が頼りないってことか。いやきっと違う、中身がナルシストで俺様な跡部なせいで私の顔が悪役顔っぽく影響されてるだけだな、うんきっとそう。
それにしても自分の顔と向き合うというのはずっと鏡と向かい合っているようで違和感がある。慣れない。
そもそもどうしてこんなことになってしまったのやら。ノーコンのどっかのアホが剛速球をこの私目掛けて投げてきて跡部が庇ってくれた、そうそこ。そこまではちゃんと私は私だった。跡部が私の癇に障るようなこと言って私を怒らせなければバランスを崩して倒れて、あらまびっくり!なんてことにはならなかったんだ。ん?
…てことは…

「跡部、いや私」
「いや跡部だろ」
「ちょっと私を掴んで」
「は?」
「いいから、はい」

何なんだ、という跡部を無視して若干無理やり腕を掴ませる。跡部が私の腕を掴んだのを確認して、私は跡部…いや私の長い脚に跡部の…いや私のいや跡部…とりあえず脚をかけて転ばせた。い、痛い!
二人して床にダイブしたのだから痛いに決まっている。

「わ、私が目の前にいる…!」
「痛いんだよ、何がしたいんだ」
「いや…さっき二人で転んでこうなったから同じことしたら衝撃で戻るかなと…戻んなかったけど」
「…まあ何もしないよりマシだったか」
「あああ、ごめんね私の身体ぁぁぁ…」
「オイ、あんまりベタベタ触るな気持ち悪い」
「私の身体なんだからね?!」
「こんな感じ」

そう言うと跡部はさすさすと私の腕をさすってきた。あ、確かに変な感じする…気持ち悪い。

「うわ、俺が気持ち悪くなった…」
「アホなの?」

うっせー、と跡部は私の顔でちょっとだけ照れくさそうにした。んもう私可愛い!いや跡部は可愛くない。私の表情が可愛い。

「じゃあ、しっかりやるんだぞ」
「どうしよう、私の成績上がるじゃん」
「……………」

幸いなのは、私と跡部が同じクラスで互いを監視できるということだ。監視というのは言い方が違うかもしれない語弊があるぞ。互いの状況を把握できるのは少しだけ安心感を与えてくれた。そして跡部は成績優秀…もし先生に当てられても全然余裕。むしろ心配なのは私だ。先生たちからの信頼も厚い跡部のことだから、当てられることだって少なくない。跡部みたいに全教科得意科目、苦手科目なしなんて優等生じゃない私は苦手科目はとことん駄目、というタイプだ。心配だ。

私の嫌な予感は案の定的中し早速苦手な教科で当てられてしまった。え、どうしよう…!ぜんっぜん解らない…間違った答えなんて言ったら跡部に後で殺されるかもしれない…いやもうどうしよう…!
跡部に助けを求めるべく見やると奴はやれやれといった風に溜息を吐いた。いや溜息吐いてる場合じゃないですよごめんけどマジ私今ピンチなんだからね!

「先生」
「ん、どうした苗字」
「跡部君、体調が悪いみたいなんです。部活中も急に倒れたりして…保健室へ連れて行ってもいいですか?」
「そうなのか跡部…大丈夫か?」
「は、はぁ…」
「跡部君、大丈夫?すごい汗よ、すぐに保健室に連れてってあげるから!」
「う…き、気持ち悪い……跡部のえん、ぎ…うぇ…」
「あ?うまくやってんだろ?」

どの辺りがですか!?

必死な顔で跡部の身体を支える華奢な自分の身体。こうして見ると私と跡部って体格がこんなにも違うんだ。私って跡部と比べたらだいぶ小さいな。そうして考えるとなんか癪だった。