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2017/02/20 23:42 「丸井くんたちってさあ」 「んぁ?」 机の上で腕を組み、それを枕代わりに頭を預けつつ顔だけ隣にいる丸井くんに向ける。自習だというのに珍しく真面目に勉強している丸井くんに少しだけ焦燥心が沸いた。いくら立海大付属は中高大エスカレーター式の学校といえど一応肩書は、こう見えて、受験生なのだ。 「テニス部の皆に私の話とかするの?」 「はー?なんで?」 配られたプリントと睨めっこしていた丸井くんが初めてこっちを向く。プリントの問題に頭を悩ませていたのか眉間の皺がそのままだった。なんて険しい顔をしてらっしゃるの。急になんだよ、そう言いながらシャーペンを指先で回す。器用だなあなんて頭の隅で関心しながら気になったことを訊いてみる。 「あの2年の子、切原くんだっけ」 「赤也がどうしたんだよぃ」 切原くんの名前を出した途端、手元が狂ったようにクルクルと綺麗に回っていたシャーペンがその手から零れ落ちた。 「んー、この前ね、こんな感じに見られてさあ」 こんな感じ、と先日切原くんが私にしたのを真似るように、丸井くんの頭のてっぺんから足元へ目を動かす。そして最後に顔をじっと見つめれば丸井くんは居心地悪そうに身を引きながら「な、なんだよ」と小さく言った。そうそう、あの時の私もそんな顔をしていたに違いない。 「そのあとふーん、って」 「ふーん、って?」 「アンタが噂のアイドルの##name_1##ちゃんッスか?…って言われた」 切原くんの言い方を再現していると後ろで寝ていた仁王くんの方から「ぶふっ」とくぐもった声が聞こえてきた。仁王くんて本当に狸寝入りが好きみたい。丸井くんは「あー…」なんて言いながらあらぬ方を見ながら頬をいている。 「ねえ、私のことなんて言ってるの?」 「だぁーから、俺らのアイドルって話だろぃ?」 「何で?何が?」 「悪口じゃねーからそんな気にすんなよ、な?」 「##name_1##ちゃんが可愛いって話しかしとらんぜよ」 「今なんか後ろから聞こえたけど嘘だよね、そんな話してないよね」 さりげなく会話に入ってきた仁王くんは無視して丸井くんに詰め寄る。後ろから再び仁王くんの声が聞こえた「無視するなんてひどいぜよ……塩対応萌え」。たぶん寝ぼけてるんだな、いろいろといつもより崩壊している。彼の中身が。 「だって、最後に切原くん何て言ったと思う?」 「な、なんて言ったの?」 「別にフツー……」 再度後ろから「ぶはっ」と噴き出すのが聞こえた。丸井くんも笑いをこらえてるのか肩が震えているし顔中ひどく歪んでいる。 「ねえ、もしかして嫌がらせ?」 「え?なんで?」 「そんなハードル上げられて私どうしたらいいの、ねえ」 「ごめん、なんかごめん」 バンバンと机を叩きながら丸井くんの顔を覗き込む。目じりに涙がたまっているのはなぜか。 「やめて顔近づけないで可愛すぎて惚れちゃう」 「棒読みなんですけど」 「あんのバカ也…あとで覚えとけよ…」 「覚えとくのは丸井くんと仁王くんだよ!」 「今まで無視してたんにそこには入るんか」 |