違えた者達


「全く、全く、全く予定外。計算外。狂いに狂った大誤算ですわ。」

手を、服を返り血に染めながら闇凛はカツカツとヒールを大げさに鳴らし真っ直ぐに目的の場所で向かっていた。闇凛にはある目的があった。それにはなんとしてもこの戦争を東方側に勝たせなければならなかった。

「どいつもこいつも、使えない奴ばかりですわね。」

さっきの二人を思い出しながら闇凛がふと呟いた。東方と西方という肩書きがありながら利害の一致で共にいたあの二人。緋凪と白露のことだ。闇凛があの二人の元にたどり着いたのはただの偶然だった。最初は白露が戦っているのだと思い手助けをしようと緋凪に襲いかかったのだ。しかし、それは白露によって邪魔された。そこで気づいた。ああ、裏切った。と。

「今更ですわ。今更仲良く、だなんて。子供の喧嘩じゃないのですから。」

闇凛の目的。それは完全に西方軍を無くす事だ。解体、解放、そんな甘いものではない。西方軍に関わるものの、一切の慈悲もなく全て無くしてやる。つまり、消去だ。

「…無くなってしまえば、全て上手くいくんですわよね。また、三人で暮らせるんです、わよね?」

足を止め、幼なじみとも言える二人を思い出した。ファンドルに瑠離。闇凛はその二人を取り戻すために、ただそれだけの為に動いていた。

「私は、間違って、ない…」

「イヤイヤ、マチガッテイタンダヨ。ゼンブ、ハジメカラ。」

いきなり後ろから声がした。機械のような、子供のような、訳のかわからない不快な声だった。闇凛が振り返るとそこには誰もいない。

「誰、ですの!?」

「ダレデモナイヨ。ダレデモナイケド、アナタノ”テキ”カナ?」

そういった瞬間、バチィッ、と何かが弾ける音がしたかと思うと闇凛の背中に激痛が走った。焼けこげた匂いが鼻につく。炎か、と思うが火薬の匂いはしなかった。じゃあ、なんだ?

「ドッチカジャ、ダメナンダヨ。***ガ、望ンデイルノハ、全テの、崩壊なんだから。」

ジジッ、と機械じみた声がクリアに聞こえてきた。動かない体を無理矢理に動かし後ろを振り向こうとする。けれど、その姿を闇凛の視界が捉えることはなかった。

「あっちは、どうなったのかな。」

****

雷と忍はけらけらと子供らしく笑いながら挑発じみた言葉を続けていた。

「あはははは!!ばっかみた〜い!!正しい、正しい。それしか言う事ないわけ〜?」

「それしかないんでしょ?だからそれ以外見ようとしない。こーんなにも楽しい事に溢れてるってのにね。」

「ね〜。ほ〜んともう。」

「「つまらない奴ら。」」

見下した目で西方軍も東方軍も関係なく二人は言葉を吐いた。少なくともその言葉にどちらも気を良くしたものなどいないだろう。

「お前ら、黙れ。」

地鳴りのような、聞いた事も無い声を出したのは氷瀧だった。それにその場にいた全員。否、同期だった信楽と水嵐を除き氷瀧の殺気に気圧されていた。

「…悪かったよ。けど、撤回はしないよ。事実なんだから。」

「うん。しのも右に同じく〜。ま〜、こ〜んなガキに言われるのは我慢ならなかったかもね〜。」

「ああ、なるほどね。じゃあ、まぁ。いつまでたっても始めない大人に変わって、俺たちガキが先陣切ってあげるよっ!!」

雷の言葉を合図に二人が信楽に攻撃を仕掛けた。だが、一直線のその攻撃はすんなりと避けられてしまう。それでも二人の行動は硬直状態のその場を変えることとなった。

「そうか。そうだな。いや、ほんとにその通りで笑いすら起こらねぇ。何説得みてぇなことしてたんだろうな。」

信楽が持っていた銃を雷と忍に向けて放った。それは二人に当たることはなかったが、意思表明としたら上々といったところだ。信楽の行動に水嵐、虎銀、レジーは自分の武器を構えた。

「俺らの痛みも憎しみも、俺らにしかわからねぇんだよ。」



(同情なんて、馬鹿馬鹿しい。)

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