私有地カジノ


赤に賭けるか、黒に賭けるか、思考を読むか、状況を読むか。負ければ失うものは金。勝ち続ければ豪者も凌ぐ金の山。

「さぁ、どちらに賭けるか決めて頂こう。」

浦和はカジノ経営者だ。齢20でPTを抜けて今や一都市の象徴であるカジノを作り上げた言わばやり手の経営者と呼べる。

「う、インチキだ!イカサマだ!!この俺様が勝てないなんて!!」

わめき散らす世間知らずな青年を前に浦和は笑みを絶やさずに次のゲームの準備をしている。青年は政府と繋がりを持つ家の息子だった。訴えてやる、一般市民が、俺様を誰だと思っているんだ!警備員に捕まれながらもギャーギャーとみっともなく吠える青年を回りはバカにして笑っていた。

嫌ね、礼儀知らずなお子様だこと。
よくもまぁ、あそこまで吠えられるものだ。
あの方を知らないのね、バカな子。
浦和さんはあのガキ程度構わないのさ。

ここで初めて浦和は動きを見せた。正確には待っていた、と言ったほうが正しい。回りから初めて受ける軽蔑や嘲笑う声に青年は孤独感に知らしめられる。そうなるのが浦和の予定だった。

「皆さん、彼はまだ年端もいかぬ青年。あまり苛めては可哀想とは思いませんか。ああ、私も少々ゲームにムキになっていましてね、いやはや、大人気ない。」

馬鹿丁寧な口調でまるで演技でもするように大袈裟に身振りをしては浦和は楽しげな笑みを浮かべていた。青年は身を縮め、この異様な空間を肌で感じている。浦和が軽い足取りで青年の前にしゃがみこんだ。

「イカサマをしたのは君の方だろう。バレていないとでも思ったかい?残念ながら君が行ったイカサマは見慣れているし"使いなれている"。勘違いはしないでくれよ?私はこれでも合法をモットーにしていてね、普段は使っていない。君と違ってね。とどのつまり、君程度の三流、暇潰しにもならないということだ。」

冷めた目が青年を見下した。ひっと小さく悲鳴をあげると引きずられるように青年は外に出された。カジノの広場はまた小さくざわめき出す。

ふふ、爽快だこと。あの子二度とここにはこれないわよ。
浦和さんに盾ついたのだろ?彼の父親が蒼白になるのが目に見えるよ。
あらあら、だめよ、あまり苛めては、ね。
さぁ、早く次を賭けよう。

「そうですとも。賭けるは自由、皆様には時間と富が有り余る。今宵はまだ長い。どうぞごゆるりとお楽しみ下さい。」

深々とお辞儀をし、浦和はstaffroom、と書かれた部屋に入っていった。部屋には山積みにされた紙束、その前に震えながら遠慮がちにソファーに座る中年の男がいた。

「…賭けは私の勝ちですね。」

浦和が声を掛ければ男は一層震えを大きくさせた。

「あ、わ、私の息子が失礼致しました!ど、どうか、どうか…」

「賭けはいつだってやり直しは効かないことくらい、ご承知でしょう?三流風情が。貴方はこう言いましたよね?息子が負ければ私の持つ全てを渡す。とね。」

浦和は男の隣に立ち、一枚の紙を目の前に差し出した。契約書と書かれたそれにはびっしりと文字が埋め尽くされて、男の字で名前が書いてあった。

「サインでも印でも構いませんが、まぁ、稀に血印という方もいらっしゃいますよ。私的には家紋の印が正確で好みですがね。」

「ど、うか…」

バンッ!と音を立て震えながら声をだす男の頭を浦和が押さえつけた。ミシリと男の骨が軋む。浦和は押さえつけたまま言葉を続けた。

「耳まで三流か?私と貴方がモノを頼める対等な立場だと思ったか?貴方に出来ることは印を押すか、死ぬか。…選ぶものは二つに一つしかないのをお忘れなく。」

(ペンとナイフ、お好きな方で)

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