許せない事

許さない。そう呟きながらシェルゥはカタカタと複数のパソコンを前にキーボードを打っていた。そこには間違いなく敵意が籠っている。西方軍内の様々な場所を写し出しており、敵味方問わず行動が筒抜けになっている。

「こいつじゃない。」

シェルゥには目的の人物がいた。絶対に殺さなくてはならない相手だった。だからといって別に親の敵であるだとか、因縁の相手だというわけではない。それでもシェルゥにとっては何よりも大切な子を傷つけたなによりも許せない相手だ。

「追いつめて追いつめて、殺してやる。」

大切なあの子を傷つけたあいつを、許さない。

画面に男が映り込んだ。それは目当ての相手ではないものの走り回るその男にシェルゥは目を付ける。にたり、と笑いその画面に目を向けた。シェルウの勘はよくあたる、特に大切な少女ロトムの事になるとなおさらだった。襲撃を受けて帰ってきたロトムの腕に大きな痣が出来ていたのを見たとき、シェルウは確かな殺意を相手に覚えた。


紅季が走る。闇雲に、めちゃくちゃに。地図は持っているが炎楼が死んだ今ではただの紙くずにしか過ぎなかった。

「あー、まじつっかえねー。炎楼の馬鹿がなんであそこで死ぬんだよ。」

「やっぱり死んだですかです?」

「うわっ…ってなんだお前か。」

急に現れた遥兎は紅季の態度など気にせずににこにこと笑っていた。そんな様子に紅季は呆れ先を急ごうとした。が、そこで足を止める。

「どうかしましたかです?」

「敵だ。」

目の前に現れたのはリルだった。二人を見つけるとああ。と呟き戦闘態勢に入紅季と遥兎を視界に捉えた。

「シェルゥのやつ…本当にどこにでも仕掛けてるんだな…。」

「意味わかんね、死んじまえっ!!」

「同意ですです!」

二人がリルの方へ走り出した。余裕、とでもいうように紅季が笑い飛び掛かろうとしたときだ。リルが合図をするように何かを呟いた。途端、地響きのような音がしたと思えばガラガラと瓦礫が降ってくる、否、天井が崩れていた。やばい。紅季と遥兎は咄嗟に判断し後ろへ下がろうとした。しかし、どこからか「させないよ。」と少年の声が聞こえてくる。その瞬間二人の体に何かが触れた。

「ちょ!シェルゥ!!俺まで殺す気かっっ!!」

リルが叫び、走り出そうとする。が、その足にも何かが触れる。

三方向から爆発音が轟いた。


「…っ…くそっ、見境なしかよ…」

右足は無くなっていたがかろうじて生きていたリルが瓦礫の中から出てきた。だが、一人で動くことは困難だろう。助けを呼ぶために携帯を手にしたときだ、二人の人影が落ちる。

「お前ら…」

それは見知った顔だった。けれど、リルが何かを言う前に、その言葉を隠すように銃弾が放たれた。

「…ロゥ兄さん。よかったんですか?」

「ああ。もう、関係のない事だ。」




(お前は、まぁ、”良い奴”だった気がするな)


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