噂
フレンの部屋に行く途中、まあまあの味のカレーを食べ、
先へ進む。(本当にまあまあの味だった)
騎士に気をつけながら、ユーリは呟く。
「下町の様子見て戻るつもりが、とんだ拾い物をしちまったな」
「拾い物ってなんです?
よろしければ、わたしがお城の人に届けましょうか?」
「いや、あんたにだけは、ちょっと頼めない拾い物なんだよ。
・・・自覚がねえならいいって」
「そうですか。気が変わったら言ってくださいね」
エステルは微笑みながら先へと進んでしまった。
・・・天然って、和むなぁ・・・。
和む私とは裏腹に、ユーリは一人、考え事をしていた。
「世間知らずの貴族のお嬢様ってとこかな。
でも、なんだって、騎士に・・・」
「それはほら、あれだよ。
可愛いあの娘を襲おうと騎士たちが結束し・・・」
「それはないな」
「・・・デスヨネー」
うん。私も言いながらこれはないと思ったよ。
話しているうちに私たちはエステルに追いつき、
私は先ほどからの疑問をエステルにぶつける。
「ね、さっき言ってた有名って何?」
「ええっと、確か・・・。
帝都の下町には、とても可愛い女の子がいると、
騎士団では噂されています」
「・・・やっぱさ、それ別人だよ」
「なんでです?」
素で返された。
しかしそんな表情も可愛らしい。さすがエステル。
「この私が可愛い?ないない」
「そ、そんなことありません!」
なんか怒られました。
なんで怒られたのか分からず、ユーリに助けを求めるよう視線を送ると、
何故か少し呆れと哀れみを含んだ視線を返された。
「ちょ、何その瞳。なんか悲しいんですけど」
「・・・自覚がねえならいいって」
「うわ。さっきと一緒の台詞」
なんなんだ、一体。
今度はエステルに視線を向けると、思いのほか近くにいて
思わず後ろへ一歩下がってしまった。ちょ、近い!
「フレンも言ってました!
ユーリさんと一緒にいる女の人はとても可愛らしいと!」
「フレンかい!何変なこと吹き込んでんのかなぁ!?」
騎士団ってけっこう暇だな、おい!
心の中でもつっこんでいると、肩にポン、と後ろから手を置かれる。
振り向くと、先ほどの視線を未だに送り続けるユーリがいた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・いや何!?なんで手を置いて黙るの!?
っていうかその瞳やめろ!なんか悲しいって言ってんじゃん!」
「・・・ほら、行くぞ」
「散々溜めた挙句、無理やりまとめた!
言いたいことがあるならはっきり・・・
って人の話は最後まで聞こう!?」
私が話している間にユーリは先に進んでしまった。
何コレ?新手のいじめ?
とりあえず、横で「フレンが言ってました・・・」とうわ言のように
呟くエステルを引っ張り、ユーリの後を追った。
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