武醒魔導器



「先月、税の徴収にきた騎士ともめてぶち込まれた

 ばかりだってのに、またここの世話になるとはな」

「常連さんだね」

「まったくだ。

 大人しくしてりゃ飯は出てくるとはいえ、

 ここのまずい飯だけは慣れねぇ。

 ったく。キュモールのせいで面倒なことになっちまったぜ」

「おつかれさま!今日は私が愛情こめて料理してあげよう」

「ああ、頼むわ」


よっし!気合入れんぞー!

意気込んでいる私をよそに、ユーリは周囲を確認して

呆れていた。



「相変わらずのざる警備かよ・・・。

 これなら抜け出せっけど、脱獄罪の上乗せは勘弁したいな」

「もう脱獄してるし無理だって」

「大丈夫だろ。

 下町の様子を見に行くだけなら、朝までに戻ってこられるか・・・。

 女神像ってのも試す価値はありそうだな」



女神像って、さっきレイヴンとコソコソ話してたやつ?

そこに抜け道があるんですね、分かります。



「んじゃ、Let's go!だね」

「ああ」



発音が良かったことには突っ込んでくれないらしい。

べ、別に悲しくなんかないんだからね!


とりあえず歩き出したけど、ユーリが来ない。

何事かと思いユーリを見ると、なにか考え事をしていた。



「・・・なあ、ユイ」

「はい?」

「おまえって、術とか使えねぇよな?」

「・・・いや、武醒魔導器(ボーディブラスティア)持ってないし、無理でしょ」

「だよな。・・・行くか」



危なかった。

確かに、普通は武醒魔導器(ボーディブラスティア)がないと術は使えない。


でも、私の場合は違った。

この世界に来たばかりの時、何故かは知らないが術が使えた。

さっきキモールとかに使った術もそう。

あれは、時間差で攻撃する術だ。

小さく術を出したつもりだったんだけど、バレるところだった。

ユーリはキモールが攻撃受けるのを見てないはずなんだけど・・・。

危ない、危ない。






地下牢を探索していると、見張りらしき騎士が爆睡していた。



「騎士がこんなんでいいの?」

「いつものことだから気にすんな。

 ・・・お、武器みっけ」



本当に大丈夫か、騎士団。


本気で心配している私をよそに、ユーリは自分の武器を箱から取り出す。

私も箱の中を見ると、キラリと光る何かが見えた。

箱の中に手を突っ込んで探ると、案外すぐに見つかった。



「ん?それ・・・武醒魔導器(ボーディブラスティア)か?」

「そうなの?ふーん・・・」



おそらく手首に付けるものだろう。

武醒魔導器(ボーディブラスティア)はキラキラと輝いていた。



「・・・ね、ユーリ」

「ん?」

「これ、もらっていいかな?」

「いいんじゃねぇの?」



いいのか。

ユーリの言葉を信じ、武醒魔導器(ボーディブラスティア)を足に付ける。



「・・・それ、手首に付けるんじゃねぇか?」

「うーん・・・、これでいいか」



あえて足に付ける。それが俺クオリティー。


ついでに軽い片手剣も手に取る。

すると、ユーリは驚いたように私を見てきた。



「・・・戦うのか?」

「んー、まあ。って言っても剣持つの初めてなんだけどさ。

 なんとかなるでしょ」

「・・・ま、無いよりマシか。どっちにしても、オレが守ってやるよ」



ずっきゅーん!!

い、今私のハートに矢が!矢が!!



「ほら、行くぞ」

「ぁい!!」



やばい、心臓バクバクだよ。

こんなんで大丈夫か、私。





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