trick


「…何を、してるんですか」

しんしんと急に寒くなった今日この頃。彼は何の防寒具もなしに制服のまま玄関先に立っていた。

「随分遅かったじゃねえですかィ」

「今日はハロウィンフェアで残業だったんです。…どうぞ」

寒かったでしょう、と家に招き入れる。
彼はどこか不機嫌な様子で真っ先にこたつに入った。

「ずっと待ってたんだぜィ」

「今日は非番じゃないでしょうに」

「おうよ。土方の野郎をまくのに苦労してなァ」

「…それは職務放棄では」

「誰かさんがなかなか帰ってこなかったからなァ」

「…すみません」

責任転嫁された気がしないでもないが寒いなか待たせてしまったのは事実なので謝る。

「んじゃ、トリック オア トリック」

「…今の流れでどうしてそうなるんでしょう。それに選択肢同じですよね」

「寒いなか待たせた罰でさァ。おとなしく悪戯されてくだせェ」

「内容によります」

彼はドがつく(あるいは超えている)ほどのサドで有名だ。あまり濃いものはお断りしたい。

なんて意識を飛ばしてる間に彼に腕を掴まれて

「な、に…」

引っ張られた体は彼の腕の中にすっぽり収まった。

「総悟」

「まじで寒かったんでさァ」

「……」

「おめぇも寒いんじゃねえかって心配してやったんだぜィ」

「…ごめん」

「わかったなら罰として朝までこのままな」

「ん」

密着した彼の制服はひどく冷たかった。いったいいつから待っていたんだろう。

頬が自然と緩む。

「ありがとう」

眠った彼にそっと呟いた。
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