ある山奥に是と話す少女がいる
物心がついた頃には自分が変わり者だという自覚があった。他の人には見えないモノが見えていたからだ。
それは姿形が個々で異なり、性格までも様々だ。
「…すごいな」
そして、人里離れた山奥では何よりの情報源にもなる。
「…待ってました。ギンコさん」
「俺のこと、知ってるのか」
「話だけなら」
真っ白な髪と緑色の右目をもつ蟲師がいる、と放浪質の蟲に聞いた。
あまりに必死に話すものだからその時はちょっと嫉妬した。
「蟲と戯れる奴なんか初めてだ」
「友達なんです」
「ほー」
友達。その言葉にギンコさんはすごく驚いた様子だった。うん、まあわかる。
「あんまり仲良くしすぎると良くないよ」
「知ってます」
彼よりも前に蟲師に会ったことがある。…その蟲師にはかなり非難されたけど。
「精一杯生きてるだけ。自分に合った環境で、自分の生き様を貫いて、それで影響があるならしょうがない」
「一理あるな」
煙草を吸いながら腰を下ろす。あ煙はみんなの仲間だ。
「…楽しいか?」
何が、なんて聞くまでもない。楽しくないわけがない。そんなことを聞くのは愚問だ。
「すごく、楽しい」