一夜明けて


夜に家を出て、星空を眺めながらイタリアにいる彼と電話することが日課となっている今日この頃。

『また外にいるんですか』

「だって星がすごく綺麗なんだよ。"満天"ってこういうのをいうんだね」

『風邪でもひいたらどうするんですか。そっちもそろそろ寒くなってきたでしょう?』

「厚着してるから平気」

『そういう問題ではありません』

「はは、心配性だなあ」

大丈夫だよ、防寒は完璧だから。笑いながら揶揄すると返ってきたのはため息で。

『…わかりました。貴方は言っても聞かない人でしたね』

「お、諦めた?」

『まさか。強行手段をすることにしました』

「…え、」

ぶつり、と言葉の真意を確かめる前に電話は一方的に切断。

強行手段。骸はそう言った。遠いイタリアの地からいったい何を強行するつもりだろう。

「まいっか」

星を眺めるようになったのは、骸がイタリアに行ってから。同じ景色を見ていたい。なんて、柄じゃないけど、

「…1人は、寂しいんだ」


でも、そんなこと言ったら君は困るだろう?

抱え込んだ膝に顔をうずめる。

寂しい寂しい。なんでイタリアなんかに行ったんだ。電話できるけど声しか届かないなんて拷問だ。しかもイタリアって。遠すぎる。国外って。会いに行けないじゃん。

「まさかとは思いますが、ここで寝るつもりだったんですか」

「そんなわけないで、しょ…?」


あれ、誰と喋ってるんだろ。あれか。寒さのあまり聞こえてきた幻聴か。

「何馬鹿なこと考えてるんですか。ほら、立ってください。帰りますよ」

腕を引き上げられて無理矢理立たされた。

状況が把握できない。

「、なんで…」

「強行手段を使うと言ったでしょう。貴方はちっとも帰る様子がありませんでしたので僕が強制送還します」

「でも、イタリアにいたんじゃ」

「イタリアと日本間の距離などたいした問題ではありません」

いや問題あるよ。さっきまでイタリアで、3分しないうちに日本って。


ああ、でも。
会えて嬉しいな

「むく、ろ」

彼の体に飛び込むと大きな腕に優しく包まれた。よほど体が冷えていたのか体温が熱く感じる。

心地よいぬくもりは眠気を誘い、意識は沈む。



一夜明けて



そこはイタリアでした。

(え、ええ!?)
(おや、おはようございます)






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