周囲の人曰く私は"不憫な子"らしい。幼い頃に難聴になり、耳が聞こえなくなったからだ。でもそれまでは普通に喋ってたわけで、口の形を忘れたわけじゃないから何事もなく話せる。相手の唇も読めるようになったから会話もできる。不便だと可哀想だと同情の眼差しを向けるのは周りだけ。
「千里も一緒にバレーをしよう!絶対楽しいぞ!」
「私体力ないからきっと続かない」
特に彼は口を大きく使っているから読みやすい。周りが変に気遣い始めても、小平太は昔と同じまま。
「大丈夫だ!わたしと一緒にやっていれば自ずとつくぞ!」
「小平太は体力あるもんねえ」
うらやましい。今だって授業の合間にわざわざ来てくれてる。学園とはさほど離れていない。が、授業の合間に来るには少々厳しいものだと思う。
しんどいでしょ?もう頻繁に来なくてもいいよ。たまの休みに顔見せてくれる程度でいいから。もう大丈夫だよ。一人暮らし、慣れたし。
大丈夫だと、何度言っても小平太は定期的に様子を見に来ることをやめない。いつか体調を崩さないだろうか。そっちの方が心配だ。
「そうだ!今度…」
「小平太」
「ん?」
「頻繁に来てくれて、すごく嬉しい。毎日が楽しくて、待ち遠しい。…でも、無理をして来ているんだったら、」
「無理などしていない」
土で汚れた顔を輝かせて、彼は言う。
「わたしが会いたいから、会いに来ているんだ!」
ああ、嬉しくて泣きそう。小平太も私と同じ気持ちだと、思っていいのかな。人懐っこくて、人見知りのない彼は、学園にも友達がいっぱいいるだろう。でも私には、小平太が唯一無二の友。唯一で、最高の。
「…ありがとう」
「気にするな!ところで、さっきの続き、話していいか?」
「あ、うん。ごめん遮って。何?」
「今度忍術学園に遊びに来ないか?」
長次に千里の話をしたら会ってみたいと言われてな。学園の案内もしよう。それから委員会と他の6年生も紹介するぞ。
「そしたら友達いっぱいになるな!」
「…うん」