絆される
「あ、来た来た。旦那〜こっちこっち!」
屋上はすでに観賞状態万全の状況。望遠鏡が数台とお菓子も置かれてる。真田くんなんて星そっちのけでお菓子の方行っちゃった。
あれ、目的星だよね?
「この望遠鏡・・・備品って書いてあるけど、」
「ああ、理科室からちょっと拝借してきたからね」
それは無断使用と言うんじゃ、
「山下殿!早くせねばみたらしが無くなるでござるぞ!」
「あ、私の分もどうぞ」
「なんと真か!?」
ああ食べる様もかっこいい。その姿を見るためなら団子なんて惜しまない私。
「良かったね、楓ちゃん。旦那とまともに会話できて」
「うん・・・今まで馬に蹴られてしまえって思ってて、ごめん」
「それ俺様のこと?ねえ俺様のことだよね?」
「これからは恋の仲介人って呼ぶね」
「呼ばなくていいから」
そんな即答しなくても。冗談なのに。
「っていうか何で馬?」
「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死ぬって、慶次が」
(おそらく)今この場で最も恋愛経験豊富な彼が言うんだから信憑性は高い。実際に蹴られた例は今だかつて聞いたことがないけど。
「ま、旦那は色恋沙汰に関しては全くの無関心だからさあ。一人より二人の方が都合いいでしょ。なんだったら竜の旦那から恋の秘訣でも聞く?」
「竜・・・?」
「伊達政宗。片想い長いんだってさ」
心臓が、勢いよく脈をうった。
『伊達政宗』その名を聞いたのはいつぶりだろう。
「それ、私だ」
「ん?」
「片想いの相手、私なんだ」
真っ白な記憶が甦る。
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