2人とも武士だけあって動きがいい。速いし、的確だ。
「…シロ、別れてやり過ごそう」
小声で発した提案に相棒は無言で頷いた。
それを確認してからその場を離れるために少し奥に踏み込む。案の定、奥州の筆頭は後を追って来た。
「HA!さっきから逃げてばっかじゃねえか。少しは反撃してみろ!」
「遠慮しときま―す」
一国の主相手に戦うとか無謀すぎる。分が悪いのわかりきってるじゃん。
「そんなことより、部下1人残していって大丈夫なんですか―?」
「小十郎は犬に負けるほどやわじゃねえ、よ!」
「わ、」
危なっ!顔掠ったよ。あとちょっと狙いが左だったら頭に直撃してたかも。
いやそんなことより、
「シロは狐なんだけど」
ここ重要だ。本人気にしてるし。
「げっ」
何も考えないで走ってたら行き止まりに行き着いた。行き止まりっていうか、崖?
これだから土地勘の効かない場所は。
「もう逃げ場はねえな」
追い詰められた。うーん、どうしたものか。
「飛下りるか?」
「冗談。死にますって」
ここ結構高いし。下に川流れてるっぽいけど浅かったら終わりだ。
「さっさと諦めちまいな!」
相手が地を蹴り一気に距離が縮まった。6つの刀の矛先が一点に向いている。
右に避ける。が、攻撃はまだ終わってない。素早い刀さばきが追い討ちをかける。
「、った」
避けきれなかった。地面と背中がぶつかる。
「残念だったな。GAME OVERだ」
体に跨がる筆頭の刀の先が喉に触れる。
絶対絶命の状況だった。連日の豪雨で地盤の緩くなった崖が崩れ落ちるまでは。