もう一人、視える
「うん、一応聞いとこうか。何コレ」
「炒飯」
「緑一色なんだけど」
「グリンピース風味だからね」
「いやこれもう風味の域超えてるだろ」
とか言いつつもスプーンを動かして口に運ぶ。
文句あるなら食うなよとか思ったけどなんか美味しそうに食べてるの見たらどーでもよくなった。
あそういえば明日天気悪いってお天気おばさんが言ってたな…よし洗濯機回そ。
「兄ちゃん洗濯物は?」
「籠入れといた」
「ん」
そういえば洗剤もそろそろ無いな。買わねば。
なんて、呑気なこと考えてる間に居間でまさかの対面があったなんて。
見えるのは自分だけだって油断してた。
*
「……で、お前は誰だ」
食事を中断して発した声は先ほどよりも低く、その目は居間の隅っこの何もない空間を見据えていた。
正確には何もないように見える空間にいる僕を。
「おいこら無視すんな。お前だよ、そこの右目が赤い奴」
どうやら見えるのは君だけじゃなかったらしい。
静寂が広がった