君と朝ごはん
寝覚めは良くない。むしろ悪い方って自覚がある。目覚し3個セットしてるし。でも今日聞こえたのは携帯の着信音で。ディスプレイには"兄"の文字。
「………何」
『あ、もしかして寝てた?だめだぞ〜夏休みだからってぐーたらしてたら。ま、女の子の美容に睡眠は欠かせないんだけどね。でも寝過ぎて昼夜逆転しちゃったら後々大変なことに…』
「切ってもいい?」
『ちょ、久々の会話なのにそれ酷くねぇ?』
「用件は」
『はあ…まいいか。今から帰るから飯用意しといて』
「ん」
『あと30分ぐらいで着くから』
「ん」
『…二度寝すんなよ』
「わかって、る」
『本当かよ』
「じゃね」
まだ何か言いかけてたけど無視して切る。兄ちゃんの小言うるさいし。
「あ、六道君おはよ〜早起きだね」
重い体を動かして辿り着いたリビングには既に六道君がいた…というか浮いてた。
そういえば幽霊って寝たりするのかな
「おはようございます。貴方も随分早いじゃないですか」
「ん〜兄ちゃんが帰ってくるから」
「おや、兄弟がいたんですか」
「いるよ、2人。帰ってくるのは長男だけどね。夜の仕事してるから帰るのいつも朝方でさ〜」
おかげでこっちは不定期に早起きだよ。まったく。少しは料理覚えたらいいのに。料理できる男の人ってモテるよ絶対。
「夜の仕事?」
「そ、ホスト。うち親いないから兄ちゃんが稼いでんの。昔は夜が苦手だったのに今じゃ夜がテリトリーみたいなもん、で…」
あれ、なんか忘れてる気がする。何だっけ。思い出せないってことはたいしたことじゃないかな。
「まいいや。六道君朝はパン派?ご飯派?ちなみに私はシリアル派」
「また僕の分も用意するんですか?食べ物の無駄遣いですよ」
なんで不服そうな顔するの。見るだけでもお腹膨れるかもしれないじゃん。なんて言ったら、普通は逆に減ります。って呆れられた。
「じゃあ六道君パンね。兄ちゃん帰ってきたら食べるし。それなら無駄にならないでしょ?」
昨日の炒飯も六道君の分残ってるけど。あれは昼においとこう。
「何がなんでも用意するんですか」
「うん、その方が私も嬉しいし」
誰かと食べた方がいつもより美味しくなるんだよ。喩えそれが市販のパンでもね。
(いただきます。)