どこにいるの
さよならって聞こえた気がした。
小さな声で、寂しそうに
さよならって、言われた気がした。
「あれ」
六道君がいない。リビングにいたはずなのに。
「何してんだ千里」
「!兄ちゃん」
そういえば帰ってきてたんだ。忘れてた。
「…あいつなら出てったぞ」
「…………なんのこと?」
「ここにいただろ。人間じゃないやつ…っておい!?どこ行くんだ!」
兄ちゃんの話は最後まで聞かなかった。ここにいた六道君が出て行った。それがわかっただけで家を飛び出すには十分だった。
まだ明るい昼下がりの道を走った。
どこにいる?六道君はまだ外に詳しくない。そんなに遠くには行けない、はず。
「……そうだ」
あそこ。六道君を見つけた、あの場所。
違うかもしれない。でもいるかもしれない。
小さな可能性にかけてみよう。