四天宝寺とトナカイ
いろんなデザインのイルミネーションが街中に飾られると、今年も来たなあと思う。
「ママー、トナカイさん!」
小さな子が目の前で私を指さす。手元のかごの中からお菓子の小袋を渡すと、それはそれは幸せそうな顔をするのだ。子供は素直でかわいい。
「わいもお菓子欲しいー!」
「こら金ちゃん、トナカイさん困っとるで。もうちょっと離れ」
「困ってへんよ。わいこの店の常連やもん!」
…素直な子はかわいい。でもうるさい子は苦手だ。それがいくら常連でも。
トナカイは子供の夢を壊さない。無言でお菓子を差し出した。
「…!」
ああなんて眩しい笑顔…。あと少し口数を減らすか、ボリュームを下げれば良いのに。もったいない。
「すんませんなあ、お菓子もろてしもて。ほら、金ちゃんもちゃんとお礼言いや」
「おおきに!トナカイさん!」
……やっぱりかわいいな。思わずトナカイの手で頭を撫でてやる。すると余計に気持ち良さそうな顔をした。
「皆には内緒やで金ちゃん」
「おん!見つからんようにこっそり食べるわ!」
別に詰め合わせだから友達と食べれば良いのに。
トナカイ
四天宝寺OG
職業:フリーター