ジャッカルに片思い



その人を見ると鼓動が激しくなる。意識しなくても目が勝手に追いかけて、耳が勝手に探しちゃう。他の女の子と話してると胸が苦しくなって、彼が笑ってると私まで笑顔になったりして。

「さっさと告白しろよ」

「それができないから相談してるのに」

やれやれまったく、乙女心がわかってないね。わざとらしくため息をつく。どうでもいいような目をされた。

「お前、ジャッカルのどこに惚れたんだよ」

「君がそれを聞くのか」

私より付き合いが長い分、良いところもたくさん知っているだろうに。

「そりゃあいつはいい奴だけどよぃ、女子が惚れる要素あったか?」

「…まあ確かに押しに弱いし、おせっかいだし、常に受け身ではある」

「おい」

「しょうがない。気づいたときには好きだったんだから」

素直に気持ちを言ったのが珍しかったのか、丸井くんは大きな目をさらに丸くさせていた。

「…お前が素直なのって気持ち悪ぃな」

「失礼な。私はいつだって素直じゃないか。そう見えないのは君がいつも私をからかってるからであって、」

「丸井!」

二人っきりの教室に突然の侵入者。いや、意図的に二人きりにはなったがやましいことはなにもない。それなのにこんなに心臓が落ち着かないのは、侵入者が彼だから。噂をすれば陰ってこのことか。

「よぅ、ジャッカル」

「お前…もうすぐ部活始まるぞ」

ああ、わざわざ丸井くんを呼びにきたのか。ユニフォームに着替えてから。どこまで世話好きなんだ。そんなとこも好きだけど。

「悪いな、丸井借りていいか?」

「どうぞ。別に私のではないから勝手に連れていけばいいのに」

「おう。ほら行くぞ」

じゃあな。うんまた。手だけで別れのあいさつ。二人が見えなくなるまで振り続けた。心臓はまだ落ち着かない。


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