発見
「つまらぬな」
見渡す限り山、山、山。退屈なことこの上ない。
せっかく執務を部下に任せ(押し付け)て息抜きに来たというのに。これではかえって気が滅入る。狩りの道具のひとつでも持ってくるべきであったか。
「…退屈ほど興ざめなものはない、か」
帰るかと踵を返そうとしたとき、遠くに人の気配を感じた。
忍にしては隠しきれておらぬ。武士のものとも言いがたい。
だがしかし、こんなところに農民がいるだろうか。
相手に気付かれないように静かに気配へ近付く。
見晴らしのいい野が見えた。
そのちょうど真ん中あたりに小さな影。どうやら気配の正体はあの子どもだったらしい。
やはり近くに村でもあるのか。
少女は座ったままその手に一輪の枯れた花を持ち、辺りを見回している。
だが気配を消している私には気付いていない。
―――一瞬だった。
少女が花に息を吹きかけた、その瞬間。
花が、水を得た魚のようにみるみると美しくなっていった。
まるでたった今開花したばかりのように…
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