逃走
注意を怠ってたわけじゃない。これをするときはいつも周りに誰もいないか確認してた。
バレたら終わりだから。
だから、今目の前にいるこの人は、私の幸せを壊す人だ。
「先ほどのはなかなか興味深かった」
「………」
「もう一度見せてくれないかね?」
男が1歩近付く度に自分の足を後ろに引いた。
刀を持ってるから多分武士。身なりからしてもかなり偉い人だと思う。
この村には武士なんてめったに来ないはずなのに、どうして。
「聞こえていないのかね?」
いつの間にか目の前に、黒。
近付く男の手に体が勝手に動いた。
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