発覚
殺されなかった。
殺してくれなかった。
神様はまた、願いを叶えてくれなかった。
「いたか!?」
「いや、こっちには…」
「急げ!また傷が開くやもしれん!」
頭上を通り過ぎる声と足元。話の内容からして、きっと自分を探しているのだろう。
再び意識を取り戻し、生きていたことに絶望した。
軽くなった体を動かして、気が付けば庭の茂みに身を隠していた。
ここは立派な城だった。やはり、あの野原で会った武士は高い地位の人間らしい。
「なんで、ここにいるんだろう…」
もう何もないんだ。
故郷と呼べる村。
母と呼べる育ての親。
全部全部、消えてしまった。
ふと、滲む視界が小さな物体をとらえた。
花だ。
小さな花が、一輪だけ。
こんな、太陽の光も満足に当たらない茂みの中にいるせいで、少ししおれてしまってる。
でもその花はどこか輝いていて、すごく羨ましくなった。
どうして、そんなにたくましくいられるの。
君は、1人で寂しくないの。
私は―――
助けよう。この、たくましく生きる花を。
そして綺麗になったら枯れるまで部屋に飾っておこう。
そう決意して、吐息をかける。
花はみるみる彩りを取り戻していった。
少女は久しぶりにその頬を緩めた。
それを見ている者がいたとも知らず…
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