「ルナ、どうした?」

 踵を返しこちらへ向かってくる。白衣がひらりと翻る。


 「えっと…?」

 自然と言葉が出てこなくて、つまってしまう。






 「いや、何かサターン大人になったなーって。あははは…」

 「まぁあれから結構経ったしな」

 またもとの椅子に座って話を始める。
 研究室のを羽織って来たのか、白衣がとても似合っている。



 「ルナ、まだ治った訳じゃない。ベッドに戻れ」

 「うん…」

 そうやって、またそそくさとベッドに戻る。
 サターンが来てくれて本当に良かった。






 「こうやってルナと話すのも久しぶりだな」

 「そうだね」

 まさかサターンの口からこんな言葉が出てくると思わなかったので、びっくりした。


 「さて、わたしは研究室に戻る。あと…ジュピターに、わたしのルナぐらいしっかり守れ。とでも言っておかなくてはな」

 さっとサターンは立ち上がる。





 「あっ!サターン…!待って!」

 少し遠いと思っていたその背中に触れ、ぎゅっと掴む。
 やっと掴めた。やっと追いつけた。


 「ルナ…?」

 今まで我慢していた言葉と感情が涙と共にどっと溢れ出す。


 「あのさ、まだ行かないで?もう少しだけ一緒にいてよ」

 サターンは初めて見るルナの涙に驚きを隠せないようだった。
 そして、はぁ…と溜息をつくとこう言った。


 
 「まだ伝えないでおこうと思っていたんだが…」

 「?」

 「ルナ、わたしはお前のことが…その、好きだ」


 私は顔を上げようとする。


 「だっ!まだ駄目だ。下を向いていろ!だから、わたしはルナが望むなら、
研究など…どうでもいい」


 サターンの大きい手が顔と目に優しく触れる。






 「だから…」

 そしてゆっくりと上を向かせて。


 「わたしの事などで泣くな」

 ちゅっと軽く唇に触れるだけのキスをする。






 ファーストキスは甘酸っぱく
 (うぅ…サターン!)(泣くなと言っているだろう!)

. (100111 加筆修正)
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