あれからサターンとは全く会ってもないし話してもいない。
私は、そんな事ばかり考えていて任務にいまいち集中できていなかったんだと思う。
「ルナ、後ろっ!」
振り返った時には既に遅し。
…今回の任務はそんなに難しい事ではなかった。
ただ野生のポニータを捕まえてくるだけだった。
なのに近くにいたギャロップの姿に気が付かなかったのだ。
「っ…!」
腕を押さえる手のひらには生暖かい感触。
私はしばらく任務へは出られなくなってしまった。
それから3日ぐらい経っただろうか。
私は医務室から出る事は滅多になかった。
そこに…
「おい、大丈夫なのか。マーズ」
「大丈夫よこれぐらい…」
マーズとサターンの声。何故だか分からないけど、私はさっとベッドに潜り込んだ。
案の定二人は私に気がつかずに通り過ぎる。
ベッドの中からだから詳しくは分からないがマーズは手に火傷を負っているようだった。
「(マーズ達もほのおタイプのポケモンの任務だったんだ…。)」
「すまない。私の不注意だった」
サターンがマーズの手を取りながら手当てをする。
「だから大丈夫だって!別にあんたのせいじゃないし!」
ズキン、と心が悲鳴をあげる。
あれ…なんでだろ。なんか涙出てきちゃった。
自分でも分からないうちにこんなにもサターンに依存してたんだな…と痛感する。
サターンとマーズは大体言い争いをしてるけど、それさえ私には羨ましくて。
もう少し和やかな関係になれないかと常に考えていた。
だから今、何週間かぶりに見た彼の姿を直視することもできない。
「あっれ、もしかしてルナ?」
うわっ!バレた!最悪だ…。こんな顔を見られるわけにはいかないので
ごしごしと涙で濡れた顔を拭う。
そしてバッと布団をめくられ、私を守る物は何もなくなってしまった。
「えへへ…ちょっと怪我しちゃって」
「えへへって、すごい傷じゃん。包帯に血滲んでるし」
ちらっと見ると、本当に滲んできていた。
「あ、本当だ。さっきジュピターにやってもらったばっかりなのに」
あんまり痛くないのになぁ、と思っていたその時、ぐいっと腕を引っ張られた。
「サターン…」
「全く、ジュピターはまともに手当てもできないのか」
ちょっと来い。と言われそそくさとベッドから下りる。
「じゃあ、私先に仮眠室行ってるから!」
そう言ってマーズは出て行く。
サターンは任務も的確にこなすが、手当てもテキパキとやってくれる。
「サターンは手当ても上手なんだね」
「よし、終わりだ。まぁ長年ここで暮らしてれば手当てなど簡単な方だ」
がたり、と音を立てて立ち上がり医療器具を片付ける。
そんなサターンの背中を見つめながらついつい思いふけってしまう。
私とそんなに変わらなかった背はいつの間にかグンと差をつけられ、
今まで少し頼りなく見えたその背中はちょっと大人になった気がした。
そして自分でも無意識のうちに手を伸ばしてしまっていた。
その背中は少し遠くて
(ルナ…?)(あ、えっと)
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