「 サヨナラ 」

少しの間を空けて貴方はそう微笑んだ。ゼクロムの神秘的かつ艶やかな漆黒に反比例するかのように儚くて無垢な純白。私もまた、“彼”とは違う白の温もりを背中に感じていた。今ここに流れている不気味と言って良いほどの穏やかな空気。崩れた天井から差し込む柔らかな光が、つい数分前までの激しい戦いを洗い流そうとしているかのようだった。



「…?どうしたの?」

今まで私の後ろでじっとしていたレシラムがぐっと光の中へ首を伸ばし、口に何かをくわえて私の方に差し出した。そこには蒼くきらきらと輝き、そして見覚えのある物があった。Nのペンダント。くるりと一回転させてみると中に紙が入っていることに気がついた。



「(ロケット式になってたのね…)」

黄色の輪の部分を押してみると、モンスターボールのように上半分がぱかりと音をたてて開いた。少しくしゃくしゃになった紙を指先でそっと広げる。初めて見る彼の文字に、一生懸命考えたであろう精一杯の言葉に目頭が熱くなった。そして彼の心からの伝言は私の心を捉えて離さなかった。









英雄が消えた日
(なにも知らない貴方はひとつ、愛をおぼえた)

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