視界





「ルナ、疲れたでしょう」

そう言ってランスは静かに微笑んだ。そしてそのまま私を膝の上に優しく乗せて、背中や頭を撫でてくれる。とても気持ちが良い。今日は本当はお休みの日だった。私の大好きなお花畑に連れて行ってもらう約束をしていたけれど、それも台無しだった。それからまだ何も無い普通の任務だったら良かったのだけれども運悪く戦闘が伴ってきた。だから私は文字通りぼろぼろに。今はランスがちゃんと洗ってくれたから、いつも通りのふさふさな毛並みだった。そこで不意にノック音が響いて、外からランス様。という声が聞こえてきた。私の嫌いな人。



ランスがどうぞ。と言えば、すぐにそのドアは開いた。入ってきた女の人は私をちらりと見るとまたランスを見た。そして今私とランスが居るベッドの方に歩いてくる。私は嫌で嫌で仕方が無くてランスを見上げたけれど、彼は全く気付いていないようだった。胸の辺りがちくりと痛む。


「ランス様のエーフィは可愛いですね」
「そうでしょう、私の自慢のポケモンですから。それより何の用です?」
「アポロ様が呼んでいましたよ」
「そうですか。報告ありがとうございます」



その女の人は少し名残惜しそうにしながらも部屋を出て行った。あの人はランスの部下の人で、最近何かとランスに付きまとっている。だから私はあの人が大嫌いだ。ランスは私のことを大事にしてくれる。それはとても嬉しい。だけど……





「ルナ、アポロさんの所に行きましょうか」

それとも此処で待ってますか?と聞いたランスに、てこてこと着いていくと彼は満足そうに笑った。私は一瞬も一時も貴方から離れたくないんだよ、ランス。


ランスは私のことを大事にしてくれる。それでもって大好きだと囁いてくれる。ランスはやさしいひと。私にもし、人間の言葉が話せる口があって、ランスに抱きつける腕があったら。きっと私たちは愛し合えたのに。










視界
(せめてそれだけでも私で埋めていて)