「ランスさん、ランスさん」

 「なんです?この忙しい時に」

 普通の格好で街中を歩いていたら、誰も彼女をロケット団の幹部なんかだと思わないだろう。




 「忙しいって…!」

 「あなたも幹部なんだから仕事でもしたらどうです?」

 睨み付けるようにじっと私を見つめてくるルナはいつもより小さく見えた。




 「ルナ…。縮みましたか?」

 「ブーツ履いてないんだよ」

 「嗚呼、そうでしたか」


 折角のお休みなのに〜!なんて騒いでいるルナは、ロケット団で一番と
 言っていい程ポケモン勝負に強かった。
 実際、ラジオ塔に乗り込んできた少年を見事に負かしてみせた。





 「あ。じゃあさ、勝負しようよ!」

 「全くルナは…。すぐ勝負ですね。まぁ丁度区切りがついたので良いですけど」

 やったー!とか飛び回って、近くを通りかかったラムダに
 「ランスさんとポケモンするんだー!」と言いふらしている。
 まぁ悪い気はしないが。
 ルナは珍しいポケモンばかり持っていて、どれもとても強い。
 今日は何が飛び出してくるやら少し楽しみでもある。





 「今日は新しく育てた子なんだ!」

 審判は暇そうにぶらぶらしていたアテナ。
 彼女もルナのポケモンバトルを見るのはそこそこ楽しいらしく
 いつも大体見に来ている。


 「はぁ、随分気合が入っていますね」

 可愛らしいハートと一緒に飛び出したのは美しいエーフィだった。
 それに対してこちらはゴルバット。
 これでは前と同じ結果だろう。取り合えずあやしいひかりを命令して
 バトルを楽しむことにした。









 10分後―――…



 「ま、負けた」

 「おや珍しいですねぇ」

 絶対に負けると思っていたこの勝負は、ゴルバットのあやしいひかりにより
 混乱したルナのポケモンは、自分自身に技を当てまくって倒れたのだ。



 「うぅ、頑張ったのに」

 「でもやっぱりルナは強いです」

 ルナの瞳にうっすらと涙が浮かんでいた。冷や汗がだらだらと背中を伝う(気がした)。




 「ランスさん、本当?」

 ごしごしと涙を拭っていたが、その努力も虚しく次から次へと涙が溢れてくる。


 「ほらルナ、もうこんなに日が低い。帰りますよ」

 両腕の下に腕を通して立たせてくれる。やっぱりランスさん好きだ。




 「ランスさん、好きです」

 「はいはい」








 
 (今はまだ)(このままで)

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