「う、はぁっ…ねジキッ!」

 「ルナー、持って来ましたよー」

 はい、水。と言って差し出す彼。それを一気に飲み干す私。



 「うぅ、ありがとう…」

 季節の変わり目のせいなのか、ルナは風邪をひいてしまったのだ。



 「全くールナは困った子だなー」

 別に頼んで看病して貰っている訳では無いのだが…。
 一瞬そんな考えが頭を巡ったが、仮にも世話になっている身なので黙っておいた。





 次は熱計って!タオル取り替えて!など、結構いろいろな事をしてくれる。
 だが突然、くるくると動き回っていたネジキの動作がピタリと止む。


 「…ネジキ?」

 声を掛けてもしばらくの沈黙。


 「ルナ、ご飯食べてないですねー?」

 突然、口を開いたと思えばこれだ。
 運んでいた洗面器を棚の上にコトンと置くと、こちらに向かって歩いて来た。





 「ルナ、食べられますか?」

 さっきファクトリーのスタッフの人が持って来てくれたシチュー。


 「食べられない…」

 勿論、私は『食べたくない』という意味で言った筈だった。
 何だか頭が痛くなってきて、再びベッドに潜り込もうとしたのだが
 いきなりズイッと目の前に突き付けられるスプーン。そのまま口に突っ込まれる。
 やっとの思いで飲み込み、第一声を放とうとするが。




 「な…「さてー、次は薬ですかねー」

 ちょっとドキリとした私の気持ちを置いてけぼりにして、彼はバタンとドアを閉じた。






 ポーカーフェイスも困ったもので
 (薬は口移しでー)(遠慮しておきます

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