三大魔法学校対抗試合に参加したハリー・ポッターとセドリック・ディゴリーが
 優勝杯を掴んだ後に、別所へ飛ばされたことに気付いた教員はどうやら私だけだったようだ。
 丁度見回り場所が優勝杯の近くだった私は、二人が同時に優勝杯に触れるのを見た。
 なのに一向に連絡が届かない。
 誰かが学校に辿り着いた際に、教員に必ず連絡が入るはずなのだ。
 そこで私は彼らがホグワーツとは別の場所に飛ばされた事を悟ったのである。




 二人が消えた場所でウロウロ考えるが
 誰が、何故、何の為にこんな事をするのか全く想像がつかない。

 その時、脳裏にある人物の名前が浮かび上がった。
 でもまさかそんなことは無いはず…。不安が募る。




 相手はハリー・ポッター。可能性がない訳じゃない。
 もし、生徒に何かあったら…。背筋にぞくりと悪寒が奔る。
 いてもたってもいられず、予めストックしておいた箒に跨り宙に舞った。



 「!」

 北の遥か向こう、リトル・ハングルトンの上空にただ事ではない雲が浮かんでいる。
 『あれに違いない』第六勘がそう告げた。
 そして私は箒に思い切り力を込め、猛スピードで目的地へ飛び立った。





 ◇






 そっと木陰に降り立ってみると、倒れているディゴリーに
 黒光りしている像のような物に捕らえられているポッターが目に入る。

 それと、一人の小柄な男と大きな壷。
 私は何を思ったのか、バッとその前に飛び出していた。
 冷静沈着に行動しなくてはならないのに、教員らしからぬ行為だ。




 「…ヴォルデモート、卿」

 奥に居たのは、名前を言ってはいけないあの人…本人だった。
 まだ真新しい血の臭いで気分が悪くなる。
 生徒を守るのは教師の仕事だ。だが、いくらそうだとしても
 私の行動は実に軽はずみだったと思う。
 ヴォルデモートに杖を向け、渾身の力を振り絞り呪文を唱える。





 「エクスペリアームス!」

 一瞬鋭い閃光が奔るがそれは彼が杖を一振りしただけで、遮られてしまった。
 そんな簡単に私ごときの術が通用するとは思っていなかったが、力の差は歴然としていた。
 そして徐々に近づいて来るヴォルデモート。
 さくさくという草を踏みしめる音がやけに大きく聞こえる。




 「(体が動かない…)」

 ラミネット先生!とポッターの呼ぶ声が聞こえる。
 その声に、余裕な笑みを浮かべていた目の前の人物の表情が歪む。



 「ラミネット、だと…?」

 低く、恐怖を煽るような声。
 彼の瞳は不純な紅。私の昔の恋人、突然姿を消したあの人と同じ。
 今の今まで気づかなかったが、確かに見覚えのある目だった。




 「トム…?」

 懐かしくとても愛しい名前が口をついて出る。
 思わず涙が頬を伝い、自分でも驚きを隠せなかった。


 「ロゼ…」

 姿かたちこそ変わってしまってはいるが、やっぱり私の大好きな彼だった。
 でも一体何がそこまでトムを闇に引っ張っていったのかは分からない。


 「ロゼ…泣くな」

 背中にゆっくりと回される手、昔と変わらない低めの体温。
 私は泣き止むどころか、更に涙を溢れさせる。





 「会いたかったよ、ずっと、ずっと…」

 「俺様もだ」

 「俺様…?トムには似合わないよ、そんなの」


 久しぶりに交わす、笑い話。忘れていた人の温もりが伝わってくる。
 私は此処がどこかも忘れ、トムの腕の中で眠ってしまいそうだった。
 それくらい安心していたのだ。ずっと会いたかった人。
 目を閉じる前に、微かに緑の光が見えたような気がしたけど…



 きっと気のせいだよね。

 『だって、私の隣にはトムがいるから…』








 ねぇ、トム…私あなたの夢をみたの
 (それは永遠に目覚めない)(幸せなお姫様のお話)

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