「…っえ?」
私の口から乾いた声が漏れる。
まぁそれも当然のことだろう。だって信じられないんだもの。
「た、体育の授業って言いました、か?今」
私が絶望的な目で見ているのは、恋人であるトム・リドルの顔。
「うん、そうだよロゼ」
手にバスケットボールを持ちながら、爽やかに笑う彼。
なんでも、実際の戦闘の時には体力が必要だから!という事らしい。
魔法学校で体育だなんて…聞いたことがない。
◇
ピーッと笛の音が鳴る。
「これから、20分間耐久試合をおこなう」
顧問はまさかのスラグホーン先生。
20分間耐久?私を殺す気ですか。まずあなたがやってから言ってくださいよ。
ロゼは決して運動が苦手な訳でもない。
だが、嫌なものは嫌なのだ。
仕方なく髪を二つにぎゅっと結い、グラウンドへ出る。
“熱い”ギラギラと容赦なく照りつける太陽。
こんな中でバスケットボールやったら、間違いなく3分ほどであの世逝きだ。
私が顔面を曇らせていると審判の合図で、選手が一斉に動き出す。
私のチームは緑で、相手は黒だ。
そして黒チームには、得点を入れてキラキラスマイルを振りまくリドルが。
私って本当、運が無いよね。リドルがいたらほぼ100%勝ち目はない。
「ロゼっ、危ない!」
突然頭に響く友達の声。はっと我に返り見てみると
ボールが此方に向かって物凄いスピードで一直線に飛んでくるではないか。
パスが失敗したのだろうか…?
そんな事しか考えられず、ぎゅっと目をつむる。
だが、私の耳に届いたのは友達の悲鳴ではなくリドルの声だった。
「全く、危ないじゃないか」
パチリと目を開けると、右手で私を庇い左手でボールを弄ぶリドルの姿が目に入る。
一先ずリドルのお陰で助かったみたいだ。
周りでは、きゃーっという別の意味の叫び声があがっている。
「あ、ありがとう…」
「彼氏として当然のことだよ」
即答され、何だか急に恥ずかしくなる。
勉強も出来て運動も出来るなんて絶対に反則だ。
「まぁ、貸し1ってところかな」
「えっ?う、うん…」
この時ロゼは“貸し1”という言葉と黒い笑いに、只疑問を感じるだけだった。
まだゲームは終わりじゃないよ
(ロゼ、ちょっとおいで)(?)
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