静かな部屋に突然生じるノック音。
 僕は監督生で一人部屋。普段、自分の部屋まで訪ねてくる人などいない。



 「…ロゼかい?」

 只、その人物の察しは何となくついていた。
 僕が名前を呼ぶとがちゃりと回されるドアノブ。
 すぐに入って来なかった所をみると、僕が眠っていないかを確かめたのだろう。





 「リドル…」

 顔を俯かせ、ぼそりと僕の名を呟く。


 「どうしたんだい、ロゼ」

 わざわざ僕の部屋まで来るなんて一体何があったのだろうか。
 それでも中々口を開こうとしないので、少し心配になり彼女へ歩み寄る。





 「ロゼ」

 もう一度優しく名前を呼び、滑らかな頬に手を添える。
 すると、僕には一切表情を見せずに、そして甘えたそうに擦り寄ってきた。
 そんな彼女をそっと抱き締めてやる。



 「ロゼは甘えん坊だね」

 そう呟いて、そのままひょいと体を抱き上げてベッドに腰掛ける。
 そして彼女を膝に乗せこちらを向かせる。




 「さぁ、何があったの?言ってごらん」

 「リドル…」

 やっと言葉を発してくれた。
 ロゼの害になるものは全て排除してみせる。




 「あのね、一緒に寝てもいい…?」

 きゅっと僕のブラウスを掴んでぽつりと呟くロゼ。
 頭の中の何かのメーターがぷつんと吹っ切れた気がしたのは
 気のせいだろうか?
 何か悲しい事があったのか目には微かに涙が滲んでいる。





 「嗚呼、いいよ。一緒に寝ようか」

 さっきまで読んでいた本を閉じ、ロゼをベッドに寝かせる。
 そして自分も布団に潜り込み薄いブランケットを一枚かける。


 ベッドの中でロゼを抱きしめ、顔を上へ向かせる。

 「今日は特別だからね?」

 コクリと素直に頷くロゼ。あぁ何て可愛らしいのだろうか。





 本当は毎日一緒に寝たっていい。
 それを彼女が望むのならば。


 「おやすみ、ロゼ」

 ちゅっと軽いキスを落とし眠りを促す。




 「良い夢を…」

 ロゼといつまでも共に居られたら良かったのに。
 数年後、それは叶わない夢へと成り果てた。








 魔法が解けても、君が隣にいますように
 (今は只の望みでしかない)

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