「あのね、リドルがいないの」
今でも忘れない。あの日彼女が口にした言葉。
―――――…
ロゼに合言葉を教えて貰い、彼女の眠るベッドへとそっと近づく。
嗚呼、何て愛しいロゼ。
自分と彼女しかいない、この部屋でまじまじと##NAME1##の顔を眺めるのは
何だか恥ずかしい気がする。
そっと指を髪に絡めて梳くと、ロゼが苦しそうな表情を見せる。
そしてやがて薄らと目を開ける。
「ロゼ、怖い夢でも見たのかい?」
眉間に皺をよせてコクリと頷く。
「リドルが居なくて、暗くて怖いの」
「大丈夫、僕はロゼの前から消えたりしない」
―――――…
あの日彼女が見せた安らいだ笑顔。
この笑顔を側で…傍らで、見守っていくと決めたのに。誓ったのに。
破 っ て し ま っ た 。
「僕は汚い人間だからね」
僕のような人には、君は眩しすぎた。
闇が具現化したような僕に対して、君は光の結晶だった。
キラキラしていて眩い。
君を闇の世界に引きずり込む事も可能だった。
でも僕には出来なかった。自分にも人間染みた部分が残っていたことに
多少の驚きを感じる。
無垢で純粋なままでいて欲しかったから。
君の部屋に残したローブは僕を忘れてほしくなかったから。
僕は此処にいます、何時でも君を想っています。
『愛しい、ロゼ』
最後に額に口付けを落とし、呟く愛の言葉。
ロゼ、君はちゃんと笑っていますか
(あんなの、只のエゴだった)
.