今の時刻は午後の三時。
スリザリンの談話室の机には、うっとりと目を細めながら頬杖をついている女子生徒と
教科書を手に、目の前の女子に向かってぶつぶつと何かを呟いている男子生徒が計二名。
それは決して、仲良くティータイムという訳ではなかった。
「せ ん ぱ い !いい加減理解して下さい!」
「うふふ、レギュは可愛いね」
「可愛いとかそんな事言ってる場合じゃありません!次のテストどうするつもりなんですか?」
そう。彼、レギュラス・ブラックは先程から馬鹿な先輩に勉強を教え込んでいたのだ。
だがそんな彼の努力も虚しく目の前のロゼには全く聞こえていないかのようだった。
「(あぁ、レギュって何て可愛いんだろう!)」
顔の前に掲げた教科書の隙間から姿を盗み見る。
私の為に一生懸命説明してくれている。その事実がとても嬉しかった。
私が彼に抱いているのは紛れも無い恋心。夜も眠れずってやつだ。
うふふっと気持ち悪い笑い声が自然と口から漏れる。
その声に気付いたのか、教科書から目を離して「また聞いてなかったんですね先輩!」
なんて少し怒る彼も可愛くて仕方がない。
レギュラスに想い焦がれる私の気持ちを知ってか知らずか、変わらず笑顔を向けてくる。
私ばっかりドキドキさせられて何だか悔しい。
ここで私が好きだと言ったら、彼は驚くだろうか。ドキドキするだろうか?
悪戯心に火が着く。本当の事なのだから、悪い気はしない。私の口はにんまりと弧を描く。
「ねぇレギュラス」
「なんですか」
「好きだよ」
大きく見開かれる目。作戦は成功、上手くどっきりさせられたようだ。
レギュラスは暫くそのまま停止してから、そんなこといいですから続きやりますよ。 と早口で言ってそっぽを向いてしまった。
「(これは脈アリってことで良いのかしら)」
だってあんなに顔を真っ赤にして言うんだもの。そして私はまた、うふふと笑った。
泥棒つかまえました
(わたしの心を奪っていった)(可愛い泥棒さん)
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